内容説明
幼い日に実の母と離れ、弦楽器職人の里父のもとで育った中学2年生の時本拓実。
10年の委託期間を終え、実母の家へ戻る時間が迫っている。
音楽が導く、里親との別れの半年を描いた愛の物語。
note主催「創作大賞2023」受賞後第一作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
konoha
52
里親里子という重いテーマを扱いながらも、温かい家族、音楽小説だった。弦楽器工房を営む岸根家に里子として育てられた中学生の拓実は実母の元に戻ることになり、里親との生活は残り少なくなっていく。バイオリンに打ち込み、別れと向き合おうとする拓実の成長がまぶしい。繊細な感情、美しい風景を丁寧に描き、読み応えがあった。終盤は登場人物への作者の愛情が伝わってくるようで、心を動かされた。里子の現実は不勉強でわからないが、この小説を読む限りとてもシビア。ママ呼びが終始気になってしまったのは残念。2026/05/26
えも
29
養育里親は初めて知りました。子どもを育てられない親が生活を立て直すまで、期限付きで里親になる制度▼10年の歳月を経て4月から実の母親の元に戻る中2男子の葛藤。幼少期から愛情を諦め周りから距離を取って生きてきたが、最後に、好きなバイオリンを演奏を聴いてもらうことで、里親、母親、友人ら周囲に思いを伝えようとする▼周囲の人達の愛情が彼に届いていないことにヤキモキしていましたが、後半、怒濤の展開で涙腺が弛みました。2026/03/09
nyanco
29
14歳の拓実、父の営むバイオリン工房でバイオリンを弾く日々、自分の居場所が不確かである寂しさが伝わる序盤。 拓実は里親制度で養父母と暮らしている、4歳で別れた実母の元に戻るタイムリミットが直前となっている。実の親の元に戻るのがマストであり、戻った後は養父母に会うことが出来ない。里親制度、良く知らなったので考えさせられる部分がとてもたくさんありました。幼馴染に同じく里親制度で引き取られた果鈴、彼女も里子だが実母が行方不明のため、養父母と養子縁組になる予定。果鈴の存在が拓実の現状を浮き彫りにする。 →続 2025/12/10
chiaki
27
養育里親の里子として4歳で岸根家に預けられた拓実。弦楽器職人である養父の温かい愛情の下育つが、彼に選択権はなく十年という期限つきの家族関係を、里親と施設と実親を行き来しながら築いてゆく。やがて来る別れを思い、余計な感情移入をせず周りと距離をとりながら、人生の何もかもを諦めてしまったかのような拓実。彼の複雑な心の揺れが丁寧に描かれている。子どもが親を選べない現実が突き刺さって辛い。パルティータは出発の意。ここを境に、新しい扉が開く未来を信じて、拓実や彼を取り巻くすべての人がどうか幸せでありますように…。2026/06/06
eche
26
確実に春に向かって足を進めているこの季節に読めてよかった一冊。養育里親により育てられた拓実が、いよいよ実親の元に帰る日が近付いて揺れ動く心情が繊細に描かれていた。拓実が子どもなのに大人に気を遣ったり遠慮していて切なくなった。それを転換してくれた八木沢くんはMVP!別れの時はやはり辛いけど、最後のヨーゼフの話の通り、色々な人の手でつながれ渡ったからこそ素晴らしい音色になった。拓実も必ずそうなる。央太郎が雪の足跡を見て、この雪もいつかは命を生かす水になると思った通り、新たな【出発】を祝うあたたかなお話だった。2026/01/14




