内容説明
恋人をフロリダに残し、ブルックリンへと逃亡したマイルズ。彼を待っていたのは、一軒の廃屋と将来への不安を抱えた三人の仲間だった。気のいいドラマーのビング、画家志望のエレン、博士論文執筆中のアリス。景気が後退の一途を辿る中、不確かな未来へ踏み出そうとした彼らに突き付けられた無慈悲で甘くない現実とは……。失うものの方が多い世界で、まだ見ぬ明日を願った若者たちの物語。(解説・松村美里)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ぼむ☆
10
絶えず喜怒哀楽の内の2つの感情が同居しているような登場人物たち。親、兄弟、友人、恋人、形だけは単純でも感情まで含めると、微妙な距離感を与えられた人間関係で構成されている。そして章ごとに登場人物が交代しながら主人公役を務める。各主役たちはそれぞれ苦悩や挫折を抱えており、その人物たちが2人でいる場面は多くても、セリフは比較的少なく、思慮が多く描かれる。経済的な不安を抱えたニューヨークを舞台に、穏やかに展開する『再生』の物語。最後をどう捉えるか迷うが、やはり再生の物語でいいのだと思う。2025/12/04
ほたる
9
不況の最中、不器用にもいまを生きようとする若者たち。彼ら彼女らは確かに存在し、今もどこかでありそうな者たちとしてもある。過去に負った傷も、今となっては大したものでないのかもしれない。そこにある「熱」の大きさだけは確実に計り知れないと思う。2025/12/20
ゆうすけ
8
今年も本書で読み納めだと思います(51冊読みました)。家族が帰省した静かなリビングで読むには適しているチョイスでした。多分高校生や大学生の頃からオースターは読み続けていて、新潮文庫から出ている小説は殆ど読んだ気がする(ただ『写字室の旅』は途中で挫折してしまった)。若者が主人公で、下ネタ多めの本作ですが、読みやすくはないけどなんとも言えないパワーを持っている。野球選手の名前とか、登場人物がそこそこ多い。今回も柴田訳を堪能できた。そしてオースターが亡くなってしまい、もう新作を読むことができないのが悲しい限り。2025/12/30
MN
2
「生まれた瞬間から死ぬ瞬間までに君の身に起きるすべてのこと、君のなかで湧き上がるすべての感情、生きていく過程で君が感じるすべての怒り、肉欲、君が流すすべての涙、君が笑うすべての笑い、それはみんな、君より前に生きたすべての人間が経験したことなのだ。君が穴居人であろうが宇宙飛行士であろうが、ゴビ砂漠に住んでいても北極圏に住んでいても同じこと。」2025/12/25
kasa
1
とにかく良かった。 自らの傷を精算するための自傷行為としての逃避。 過ちを抱えることのつらさや人と共有することの難しさ。近いようで遠い。遠いようで近い。 少しずつ積み上げたものが壊れる音がした。2026/01/01




