内容説明
日本は高度経済成長も終わっていたが、反面で国際的な責務を果たせと要求されるようになり始めた時期、奇妙な事件や出来事がメディアで賑やかに報じられていた。
ふと目に留まったものを手がかりにして、古井由吉の思考と文章はうねるように展開する。
純文学の代表的な作家と目され、代表作となった長篇小説『槿』により谷崎潤一郎賞を受賞して間もない古井由吉が小説雑誌で連載を始めたものが、単純な時事エッセイに納まるはずはなかった。
日常の底に埋もれている人間の「業」を言葉によって鋭くえぐりつづけるものとなった。
なお、「裸虫」とは人間のこと。「裸」を重ねて「裸々」とし、「ララ」と訓むことですこしでも人間の営みを楽しく書いていこうという試みだった。
目次
無言の電話
隣の信長
虚栄のはて
一寸前は小児
火の用心、紳士たち
転びやすき男たち
サドの潤み目
分裂と分別と
徳政令、いまひとたび
ウスザケとマチガイと
日高くして、道は詰まり
午さがりの振れ
ネクタイとシャンデリア
往ね、往ね
淵への静かな行進
あぶな虫
いつまでも若く
物忘れと知ったつもり
個性の行く末
大部屋としもたやと
とりとめもなきもの
われらは聖人以上か
もしも無常迅速を
ロックを突っ張り
解説
年譜
著書目録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
47
凡人には非常に退屈な…なんてことのない雑文のはずが、不意に鋭い人間(社会)観察となり、ああここから古井の小説が始まっていくのかなと感じさせた。油断ならないエッセイである。 なお、「「裸虫」とは人間のこと。「裸」を重ねて「裸々」とし、「ララ」と訓むことですこしでも人間の営みを楽しく書いていこうという試み」だとのこと。 2026/02/08
白いハエ
1
氏の昭和末期のエッセイとなる。一読して、その若さに驚いた。この時、既に齢50の坂にあったはずだが、平成以降の文に親しんでいた目からするとどうも清新に映る。時事事件(俗的なもの)に対し、当事者の眼差しの奥に深く切り込んでいき、その狂気の輪郭を捉えようとする手つきは変わらず、しかし、辛辣な態度が露わであるからか。いや、老練のうちに辛辣よりももっと恐ろしい語りを含むようになったのだろう。ゆえに若く映る。凄絶だ。時の裸虫(人間)たちの騒擾は果たして、氏の見た通りに空転を来し、バブルは弾け、失われし時代に突入する。2026/01/25
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