内容説明
『線は、僕を描く』の著者が描く、「水害」と「消防」その闘いと涙。
魚鷹が見守る町で、秋月龍朗は最高の消防士だった。五年前のあの日、濁流が町と彼の心に、癒えない傷跡を刻むまでは。現場を追われ、辿り着いた指令室。そこは、同じ痛みを抱える仲間たちと、声だけで命を繋ぐ場所。炎の中から命を救ってきたその手で、男は今、受話器を握る。
町と、そして自分自身の再生をかけた静かな闘いが、いま始まる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
159
最高で最強の消防士だった秋月の再生の物語。現場ではなく指令室のお仕事小説でもあった。何度も嫌な汗が出てドキドキしながらの読書だった。砥上さんは心に傷を持った人間を描くのが上手いね。これでもか~って、あからさまな傷ではなくその瘡蓋はいつか乾くかもしれないのに、早く乾かしたいがゆえについ引っ搔いてしまう・・そんな感じを受け取ってしまう。その時自分に何が出来たろう・・救えた命と無念にも救えなかった命。人命救助を仕事と割り切って勤めるには、命が重い。彼らもまた命がけなのだという事を再認識させられる。2025/12/12
美紀ちゃん
140
マメの話でグッときた。砥上さんは泣かすの上手いよね。泣くのを誤魔化すために腕立てをしたくなる消防官って素敵。110番通報の電話をかけてくる人はとにかくみんな慌てている。場所や状況を正確に聞き取り1分以内に出動できるのが理想だがそうはいかない。やり取りや受け答えというより表現を聞き取る作業。相手の言葉の叫びや嘆きの中から推測しながら何とか聞き出した不可視な情報の集積。しかしその1秒が要救助者の生死を分ける。ジムの器具について「美しい筋肉を創りたければ、そっと置け」ジワる。守る仕事をしている人は素敵です。2026/01/23
hiace9000
138
瑞乃町の中央部を流れる瑞乃川は町の象徴。町の消防士として大きな信頼と人望を集める隊長・秋月龍朗は、実は5年前の水害救助での出動の時以来、人知れずトラウマを抱え苦悩している。思わぬ辞令で現場を離れ指令室に着任した秋月は、日夜奮闘する仲間の姿に触れ、最善を尽くし命を繋ぐ陰の戦いの使命を知る。ほんの一瞬の鮮烈にして鮮明な心情の揺れ、その痛切や悔恨を見事に描き上げ、生死隣り合わせの命の現場に読み手を臨場させてしまう砥上筆の全き巧みさ。「墨」「目」からの「火と水」…今作でも遺憾なく発揮された高い作品力に感涙は必至。2026/02/21
おしゃべりメガネ
115
砥上さんが綴る消防士さんの話。シリアスなトーンながら、グッとくる人間ドラマもしっかりと書かれています。火災の現場に臨場した描写もリアルですが、やはり本作の最大の魅力は登場人物達、それぞれのキャラがしっかりとしているコトかなと。主人公「秋月」は現場では無敵のスーパーヒーローですが、指令室に配属となり、慣れない仕事に悪戦苦闘しています。そんな彼と同じ職場になった三名のメンバーもそれぞれ個性的で、彼らとの繋がりが人情味溢れてきます。「秋月」には人には明かせないワケありな悩みがあり、苦悩する姿がまたリアルでした。2026/01/13
星群
107
初読み作家さん。〝馬鹿みたいに優しくあれ〟第一話印象では、ちょっと渋めの方かなと思いながら読み進めたら、第二話の冒頭で空中をオジサンが飛んできたの文面を目の当たりにして、あぁお茶目な方なんだと認識しました。後輩の桜庭ちゃんがとんでもなく人懐こい大型犬に見えて仕方ない。私も、馬鹿みたいに優しくありたいと思います。2026/01/15
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