内容説明
アメリカ海軍、特撮を撮影す
第2次世界大戦中、B級モンスター映画界のスターであるシムズ・ソーリーは奇想天外な仕事の依頼を受ける。相手はアメリカ海軍で、巨大なトカゲの着ぐるみに入ってほしいというのだ。
アメリカ海軍は巨大な火を吹くトカゲを生み出し、日本を降伏させようという極秘計画を進めていた。ところが、ベヒモスと名付けられた全長400メートルの怪獣はコントロールが効かなかった。海軍は苦心の末に着ぐるみを使い、ベヒモスが日本を破壊するのを日本の外交団に見せつけようと決断したのだった。
そこでベヒモスのスーツアクターに選ばれたのが数々のモンスターを演じてきたシムズ・ソーリー。拒否権などないシムズは、戦争を終わるならばと、この二度とない〝生涯最高の役〟に取り組むが……。
一見、荒唐無稽でありながら、人類への愛に満ち溢れたシオドア・スタージョン記念賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
62
米国は自国が“ゴジラ”を生み出せなかったことがよほど悔しかったのだろう。そもそもアレは敗戦国だから創造し得た存在であり、自国が蹂躙されるシチュエーションなど戦勝国には想像すら及ばなかったであろう。さて第二次大戦末期の米国には核以外の究極兵器が存在しており、その実地投入の人道的観点からセットによる実演を日本の使節団に観せることで戦争終結へ導こうとするも…結果として核兵器が投下され、スーツアクターに自責の念を抱かせる。この筋立てのキモは核にあるのだが、アプローチが迂遠でメッセージが明確に伝わるとは思いづらい。2026/05/27
HANA
52
第二次世界大戦中、主人公が政府から受けた奇妙な依頼。それは着ぐるみの中に入りミニチュアの町を破壊するというものだった…。冒頭、火を吹く巨大トカゲが実際に生み出されていたという記述を読んだ時は、フランケンシュタインよろしく人類の手によって生まれたそれらが人類に反旗を翻す的なストーリーを想像したが、実際は映画の撮影場面とその内幕が延々続くだけであった。著者の伝えたいメッセージはラストにあるのだが、映画の内幕やそこの人間関係に興味がない身としては読み進めるのが非常に辛い。内輪ネタを部外者が読むのはきついなあ。2026/06/03
さぜん
45
1945年アメリカ陸軍のマンハッタン計画の裏で、海軍はある極秘計画を進めていた。火を吹く大トカゲを生物兵器として生み出し、日本に降伏を迫るというものだ。しかし、コントロール不能な生物ではその脅威を日本使節団に見せられない。そこで精巧な着ぐるみを実績のある俳優に着せ、本物さながらにセットの中で暴れさせビビらせようとする。想像するはゴジラ映画。荒唐無稽な物語と思いきや、終盤になりこれが成功していたら原爆は回避できたのではと思うようになる。意外に考えさせられる物語だった。#Netgalley 2025/11/17
とも
25
大戦の末期、火を吹く怪獣(の着ぐるみ)で日本を降伏させる作戦の話し。着ぐるみ俳優の過去の回想で進行する。ラスト近くホテルに訪れたのは…がツボだった。こんな本が書かれるとは…時代は変わったもんだ。2026/01/22
塩崎ツトム
23
スペクタクルは、現実の戦禍を、そして大量虐殺を阻止できるのか?と問われれば、一フィクション屋の端くれとしては沈黙に徹するしかない。戦争を煽るプロパガンダが成功した例なら容易に挙げられるが、では、戦争と虐殺を回避できたプロパガンダは?生の尊さ、生きる喜びを描く物語は文字通り「きれいごと」として白けた目で見られ、タナトスに身を委ねるネクロフィリアは「リアリズム」と言われる。……しかし、きれいごとを拒絶した人類は、もはや単なるけだものに――それこそ怪獣に過ぎなくなるのではないか?2025/12/01




