内容説明
アメリカ海軍、特撮を撮影す
第2次世界大戦中、B級モンスター映画界のスターであるシムズ・ソーリーは奇想天外な仕事の依頼を受ける。相手はアメリカ海軍で、巨大なトカゲの着ぐるみに入ってほしいというのだ。
アメリカ海軍は巨大な火を吹くトカゲを生み出し、日本を降伏させようという極秘計画を進めていた。ところが、ベヒモスと名付けられた全長400メートルの怪獣はコントロールが効かなかった。海軍は苦心の末に着ぐるみを使い、ベヒモスが日本を破壊するのを日本の外交団に見せつけようと決断したのだった。
そこでベヒモスのスーツアクターに選ばれたのが数々のモンスターを演じてきたシムズ・ソーリー。拒否権などないシムズは、戦争を終わるならばと、この二度とない〝生涯最高の役〟に取り組むが……。
一見、荒唐無稽でありながら、人類への愛に満ち溢れたシオドア・スタージョン記念賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
さぜん
45
1945年アメリカ陸軍のマンハッタン計画の裏で、海軍はある極秘計画を進めていた。火を吹く大トカゲを生物兵器として生み出し、日本に降伏を迫るというものだ。しかし、コントロール不能な生物ではその脅威を日本使節団に見せられない。そこで精巧な着ぐるみを実績のある俳優に着せ、本物さながらにセットの中で暴れさせビビらせようとする。想像するはゴジラ映画。荒唐無稽な物語と思いきや、終盤になりこれが成功していたら原爆は回避できたのではと思うようになる。意外に考えさせられる物語だった。#Netgalley 2025/11/17
とも
25
大戦の末期、火を吹く怪獣(の着ぐるみ)で日本を降伏させる作戦の話し。着ぐるみ俳優の過去の回想で進行する。ラスト近くホテルに訪れたのは…がツボだった。こんな本が書かれるとは…時代は変わったもんだ。2026/01/22
塩崎ツトム
21
スペクタクルは、現実の戦禍を、そして大量虐殺を阻止できるのか?と問われれば、一フィクション屋の端くれとしては沈黙に徹するしかない。戦争を煽るプロパガンダが成功した例なら容易に挙げられるが、では、戦争と虐殺を回避できたプロパガンダは?生の尊さ、生きる喜びを描く物語は文字通り「きれいごと」として白けた目で見られ、タナトスに身を委ねるネクロフィリアは「リアリズム」と言われる。……しかし、きれいごとを拒絶した人類は、もはや単なるけだものに――それこそ怪獣に過ぎなくなるのではないか?2025/12/01
garth
16
「わたしは『いかなる野獣』が太平洋戦争を終結させると心から信じた。そのときわたしは、神になるというのがどういうことか知ったのだ」『原子怪獣現る』は『原子怪獣現る』にしてほしかったですね。引っ掛けてる部分はわかるけど、それくらいなんとでもなるでしょ。2025/12/19
もち
15
「みごとな演技を見せれば、太平洋戦争は平和に終結するだろう」◆殺戮無しに日本へ降伏を促すため、怪獣の着ぐるみによるデモンストレーションが計画される。白羽の矢が立った俳優たちは、戦争被害者を減らすため、その一幕に全てを賭ける。■荒唐無稽な設定に、切実な祈りと願いが込められている。コメディと特撮と反戦と純文学を自由に行き来する、心揺さぶる温度差。壮大な遺書、出逢う人たち、作戦の結末、人生の顛末。諦めも失望も滲む、けれども希望は残り、生き続ける。静かな激情に包まれ、最後には涙を流していた。2026/01/22




