内容説明
台北、東京、マラケシュ、ウィーン、チューリヒ、パリ……。弁護士で作家の「私」は講演会や朗読会で世界各国を訪れ、さまざまな過去を抱える人々と出会う。16年前に弁護したかつての依頼人がマラケシュで語った、当時明かさなかった事故死の事情。イタリアの古い館に滞在中、怪我をした隣人の女性から聞いた衝撃的な身の上話。ベルリンで亡くなった知人の遺言執行者に指名されて知った、彼の唯一の遺産相続人との愛憎半ばする関係──。死や罪悪感に翻弄される純粋で奇妙な人々の物語と、ところどころに挿入された歴史上のエピソードによる全26章は、ページを閉じたあとに、深く鮮烈な余韻を残す。クライスト賞受賞、日本で本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた『犯罪』の著者が贈る新たな傑作短編集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
147
フェルディナント・フォン・シーラッハは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、中編かと思いきや、26の短編集でした。どの作品も、シニカルで怪し気な余韻が残ります。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000211.000009527.html 2025/12/25
ケンイチミズバ
75
量刑は軽くても恥ずかしさに耐えられない犯罪。盗撮や露出狂とか。それを擁護する発言を繰り返す夫の主張は、彼らは人を殺したわけでなく、多くは精神科が係わるべきもの。妻が防犯カメラで見た映像はある日の夫の外見と酷似しており、嘔吐する。彼女は人間の体から出てくるあらゆる液体という液体が大嫌い。おそらくそれが理由で子宝に恵まれない。優しい性格の夫の我慢も計り知れる。が、運転中に切り出す話題ではなかった。高速で移動する人体が急停止すると心臓は筋肉によって守られはするが、繋がる血管は断裂する。シーラッハらしいラスト。2025/12/08
M H
31
エッセイと創作がないまぜになった掌編集。「珈琲と煙草」よりは創作の割合が高いそうだ。弁護士で作家の「私」が各地でひととき邂逅する人々。彼らの口から語られるのは一言では割り切れない人生の悲劇であり皮肉、罪。各章の最後の行まで、いや最後の行から余韻が重なり次の地へ。日本や映画への言及含め興味を持って読んだけれど、やっぱり「犯罪」みたいなキレッキレな短編もう出さないのかな。2025/11/30
星落秋風五丈原
23
犯罪ともいえぬ奇妙な出来事と出会う弁護士兼作家のエッセイ風。2025/12/20
ベル@bell-zou
22
著名人を顧客に持つ弁護士アリソンの話、時計工場を継いだトラウプの話、酒に酔い骨折したフランチェスカの話、遺言執行人に指名されたクリスティアーネの話。個人的な見解や感情を入れない洗練された語りが行きずりの人々の人生の一片を鮮やかに切り取る。「犯罪」「罪悪」のような隙のない構成が好きなのだけれど、独り言のように挟まれる数行の篇にティーブレイク的なゆとりがあるのもまた良し。(冒頭と1に引用:人間は善意と愛情を失わないために、思考を死に支配されないようにしなくてはならない - トーマス・マン『魔の山』)2025/12/28




