内容説明
台北、東京、マラケシュ、ウィーン、チューリヒ、パリ……。弁護士で作家の「私」は講演会や朗読会で世界各国を訪れ、さまざまな過去を抱える人々と出会う。16年前に弁護したかつての依頼人がマラケシュで語った、当時明かさなかった事故死の事情。イタリアの古い館に滞在中、怪我をした隣人の女性から聞いた衝撃的な身の上話。ベルリンで亡くなった知人の遺言執行者に指名されて知った、彼の唯一の遺産相続人との愛憎半ばする関係──。死や罪悪感に翻弄される純粋で奇妙な人々の物語と、ところどころに挿入された歴史上のエピソードによる全26章は、ページを閉じたあとに、深く鮮烈な余韻を残す。クライスト賞受賞、日本で本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた『犯罪』の著者が贈る新たな傑作短編集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
157
フェルディナント・フォン・シーラッハは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、中編かと思いきや、26の短編集でした。どの作品も、シニカルで怪し気な余韻が残ります。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000211.000009527.html 2025/12/25
たま
99
2019年の『珈琲と煙草』と同じ断片集(155ページで26の章)だが、こちらの方が小説的なものが多く面白かった。『午後』と言う題名は人生の午後であり、また活動を終えて一息つく時間でこの本にぴったり。ヨーロッパのあちこち(東京も)で行きずりの人が作家に語る彼(女)の数奇な人生。昔ながらの階級社会で先祖の城館に住む人もいれば財を成したアルジェリア移民もいる。そして一人一人が強烈な個性で自分の人生を生きている。古いしかししぶといヨーロッパが立ち現れる。それに意図せずに対比される日本のゆるキャラ文化がおかしい。2026/02/09
kaoru
90
シーラッハの新刊は1から26までの短編集。善良な夫を露出狂と間違え死に至らしめた女性やエージェントの作為に幻滅し職業音楽家の人生を諦めたピアニストなど苦しみを背負った人々が多く登場する。10では好きな小説『山猫』『回想のブライズヘッド』『ブッデンブローク家の人々』が語られ嬉しかった。ワインスタイン事件を巡るハーバード大学の学生の反応に女性裁判官が幻滅する話は決して他人事ではなく、東欧で広がるメディアの検閲は全体主義の復活を感じさせる。作者の日本滞在記もあるが「日本企業で使われるマスコットのぬいぐるみは→2026/02/06
どんぐり
84
シーラッハの午後26篇、いずれも無題で、1ページほどの短いものから数ページに及ぶものまで、人生の淡い影や光をすくい取るように綴られている。〈1〉は「赤い糸」、〈2〉は「ダンカン」、〈3〉は「ロスト・イン・トランスレーション」、〈4〉は「宗教儀式」、〈5〉は「時計工場」。一つ一つを読み終えた直後に、余韻が消えないうち自分で題を付してみると、自分の中により深く沈殿していく。全体をとおして再読が必要な本だと思う。2026/01/12
ケンイチミズバ
83
量刑は軽くても恥ずかしさに耐えられない犯罪。盗撮や露出狂とか。それを擁護する発言を繰り返す夫の主張は、彼らは人を殺したわけでなく、多くは精神科が係わるべきもの。妻が防犯カメラで見た映像はある日の夫の外見と酷似しており、嘔吐する。彼女は人間の体から出てくるあらゆる液体という液体が大嫌い。おそらくそれが理由で子宝に恵まれない。優しい性格の夫の我慢も計り知れる。が、運転中に切り出す話題ではなかった。高速で移動する人体が急停止すると心臓は筋肉によって守られはするが、繋がる血管は断裂する。シーラッハらしいラスト。2025/12/08




