内容説明
年の瀬に起きた痛ましい〈地下鉄S線内無差別殺傷事件〉。突然男は刃物を振り回し、妊婦を切りつけ、助けに入った老人を刺殺した。時は過ぎ、事件に偶然居合わせてしまった人々には、日常が戻ってくるはずだったが…。会社員の和宏は、一目散にその場から逃げ出したことをSNSで非難されて以来、日々正体不明の音に悩まされ始め……(「音」)。切りつけられた妊婦の千穂は、幸いにも軽傷で済んだが、急に「霊が見える」と言い出して……(「水の香」)。他全6編。事件が終わって始まった、少し不思議でかなり切ない〈その後〉を描く連作短編集。
目次
00 事件
01 音
02 水の香
03 顔
04 英雄の鏡
05 扉
06 壁の男
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
のんちゃん
36
年の瀬に地下鉄の中で起きた無差別殺傷事件に居合わせた人々の事件後の物語と、なんとなくワイドショー的内容を想像して読み始めたが、その想像とは全く違う展開、構成だった。そこに居合わせ人々が直接的に、また、間接的にも心的外傷後ストレス障害に悩まされる様子が苦しい。が、各々が各話の最後で前向きになる結末で救われる。そして、最終話で事件と関わりのないある男性が話を締める展開もお見事。桜庭一樹氏の解説もこの作品の読み方の核心を突く。内容、構成共にもう一度言うが、お見事。作者著『偽りの春』も唸ったが、今回もまた唸った。2025/10/01
mayu
26
電車内で突然青年がナイフを振り回した〈地下鉄S線内無差別殺傷事件〉をきっかけに日常が一瞬にして変わってしまった人々の事件のその後の日々を描いた連作短編集。犯人や事件を深堀るのではなく、事件を経験した人達について描かれているのが気になって手に取った。自分にだけ聞こえる音や見えるもの。事件がその場にいた人達に与えた大きな影響とそれに伴う闇にザラザラした気持ちが広がる。物事は多面的なもので見えているものは一部だと解説を読んでとても思う。最後に描かれた「壁の男」が良かった。2025/09/29
備忘録
25
以前読んだ、収録作の顔が面白かったので読みたかった作品 電車での通り魔事件に巻き込まれた人達のその後を描く 顔以外の作品もとても良かった 最終的にそれぞれの本来の日常を取り戻していくがそこに至るまでのそれぞれの苦悩と、それを克服するまでの姿にとても満足した2025/10/30
ベローチェのひととき
20
妻から廻ってきた本。6編からなる連作短編集。地下鉄S線内無差別殺傷事件に居合わせた人々のその後の物語。直接外傷を与えられなくても、心に深い傷を負うものだとつくづく思った。中でも逃げただけなのに個人を特定されSNSで誹謗中傷を浴びたガタイのいい男性は気の毒だった。最後に庇って殺された老人の行動理由が明らかになるが、人生そういうものだと思う。2025/10/21
petitlyz
18
「彼女はもどらない」と「偽りの春」が好きでこれも読んでみた。挙げた2作とは少しイメージが違っていたが、ミステリ?オカルト?ファンタジー?ハートフル?のような要素がいろいろあって楽しめた。2025/11/09




