内容説明
強制収容所を生き延びた詩人・石原吉郎は,戦争を生み出す人間の内なる暴力性と権力性を死のまぎわまで問い続けた.彼はシベリアでいったい何を見たのか?抑留者たちの戦後を丹念に追った著者が,シベリア抑留の実態と体験が彼らに与えたものを描きだす.人間の本性,私たちが生きる意味を考えさせられる1冊.
目次
はじめに
プロローグ
舞鶴に降り立った人びと/快晴の空のしたで/「喜び」の陰で/消せない記憶を抱えて/「みんな,死んじゃったなあ」/「シベリア」を問い直す
第1章 封印された過去
見たこともない詩/ 詩を支えに/浦島太郎/「シベリア帰り」/日本語との再会/自分を解放するために/仲間の目にうつった詩人/底知れぬ暗さ湛えた目/内なるシベリアへ/重たい言葉/表現するかたち/小さな骨壷/疼くような思い/告発しない決意/肉親への義絶状/詩壇超えた反響/転換点/<人間>として立つために/解かれた封印
第2章 ラーゲリの記憶
敗戦後に始まった「戦争」/ある<共生>の体験/収容所に見た民主主義/故国への屈折する思い/忘郷と望郷/死のとなりで人間の本質は・・・/「数としての死」/
みな,固有の名前をもっている/被害者であること,加害者であること/人間は加害者のなかから/「絶望」を背負って/コラム・香月泰雄のシベリア・シリーズ
第3章 戦後社会との断層
すれ違うまなざし/一人の死者も置き去りにしない/人間の内にあるもの/シベリアを生きる/どうしても書けなかったこと/「戦後」を生きる
第4章 詩人へと連なる水脈
一人ひとりのシベリア/ 自分はどう生きたのか/あの戦争は今も近くに/ 死者の固有の名を呼ぶ/ 現実に向かい続ける意志
エピローグ
付録 三編の詩・石原吉郎
おわりに
石原吉郎年譜
参考文献
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