内容説明
被災・疎開の極限状況から敗戦という未曽有の経験の中で、我が身を燃焼させつつ書きのこした後期作品16編。太宰最後の境地をかいま見させる未完の絶筆「グッド・バイ」をはじめ、時代の転換に触発された痛切なる告白「苦悩の年鑑」「十五年間」、戦前戦中と毫も変らない戦後の現実、どうにもならぬ日本人への絶望を吐露した2戯曲「冬の花火」「春の枯葉」ほか「饗応夫人」「眉山」など。(解説・奥野健男)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
394
読了は1日遅れたが、桜桃忌に際して太宰追悼の思いをこめて『グッド・バイ』を。この作品集は16篇から成るが、巻末の「グッド・バイ」は、太宰の絶筆となった未完の長編小説。編集者の田島が、それまでに付き合っていた女たちとの関係を清算しようとする物語だが、完成する前に奇しくも太宰自身がこの世と訣別してしまった。ただ、この小説は未完のままの方がよかったようにも思う。これが太宰の「白鳥の歌」にふさわしいとは思えないからだ。もっとも、それもまた太宰らしいと言えばそうなのだが。篇中では2つの戯曲が異彩を放つ。2014/06/20
ehirano1
180
標題作について。クズ野郎のお話なんですけど、捧腹絶倒でしかも巧い、何もかもが巧い、巧過ぎる。誰もが言われるように未完作であることがとても惜しまれます。本作のオマージュも散見されますが、やはりご本人の筆で完成されたものを読みたかったです。2024/02/12
ゴンゾウ@新潮部
156
「グッド・バイ」人間失格と並行してこんなにユーモアのある作品を書くなんて。続きが読みたい。「饗応夫人」「眉山」「メリイクリスマス」「朝」 とても魅力的な女性が登場。「苦悩の年鑑」「十五年間」「たずねびと」も彼の苦悩がうかがえる傑作。やっぱり太宰は凄い。2014/09/25
優希
148
戦後の極限状態で発表された16編。時期もあってか絶望感漂う作品が多いです。ただ、その一方でコメディ色のある作品もあるのが興味深いところですね。絶望の吐露とはいえ、戯曲も書いていたんですね。太宰の戦後の自分史や思想の集大成であり、太宰の到達点とも言える作品なのでしょう。未完の絶筆『グッド・バイ』は亡くなる直前まで書いていたとは思えないほどユーモアが感じられます。完結したらどのような結末になっていたのでしょう。それでも未完のままで終わる形で良かったのかもしれません。太宰最後の色を見たような気がします。2015/03/07
Major
146
掛値なしに面白い。新作落語の脚本にもできるのではないか。ー前略。太宰さん、貴方が兎に角女性にモテるのはよく分かっているよ。あの世へ行く前にきちんと道徳的に愛人たちともケジメをつけて別れなくちゃいけないことも••• 貴方の優しさと優柔がなかなかそうはさせないことにも苦悩していたんだろうね。酒に溺れて呑んで呑んで呑まれて、、、だけど一つ貴方は変わったね。自己投影させた女性たちを『失格』に登場させて、それまで演じていたはずの道化に貴方自身がなってしまったから、もう逃げることも衒うこともしなくてよくなったのだねー2024/12/05




