令和ファシズム論 ――極端へと逃走するこの国で

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令和ファシズム論 ――極端へと逃走するこの国で

  • 著者名:井手英策【著者】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 筑摩書房(2025/09発売)
  • 2025→2026年!Kinoppy電子書籍・電子洋書全点ポイント30倍キャンペーン(~1/1)
  • ポイント 540pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480864864

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内容説明

令和の日本社会をおおう〈ぼんやりとした不安〉。その輪郭を描き出すべく、「ファシズム前夜」を経験した、かつての日本とドイツに光を当て、両国がファシズムに屈した背景を、財政史という観点から分析。そこで得た基準をもちいて、現代日本の危機的状況を浮かび上がらせていく。多くの人が生活不安をかかえるなか、「人気取り」の政策案が打ち出され、「極端」な議論を展開する〈小さな権威主義〉が力を得ていく──。居場所を追われる「自由と民主主義」をまもるための立脚点を探求し、肯定的未来への道を切りひらく渾身の書!

目次

はじめに/私だけが不安なのだろうか?/財政史というメスで社会を解剖する/「ポピュリズム」で終わらせない/日本社会は右傾化したのか/同時におきていた左傾化/評価するための基準を/伝統主義Aと伝統主義Bのたたかい/肯定的な未来に居場所を/第一章 歴史の転換点ではなにがおきるのか?/1 混同されるファシズムと全体主義/ファシズムという言葉/混同されたファシズムと全体主義/異なるものを等しくあつかう/「あいつ」と「私たち」/現実味のないファシズム/すべてがかわってしまう/ファシズム的な状況について考える/2 家族のふたつの顔──時代の方向感覚をもつ/社会保障の発祥の国・アメリカ/国民の家・スウェーデン/もうひとつの顔/「私たちの必要」という財政の本質/どこにいるのか どこに向かうのか/第二章 昭和恐慌からの脱出と高橋是清の苦闘/1 昭和恐慌の衝撃と不安定化する社会/蔵相・井上準之助の理論/不幸が重なった金解禁/疲弊した農村と都市の人びと/民主主義と社会主義への反動/陸軍青年将校たちの憤慨/2 積極財政への転換/高橋財政の独創性/財政と金融の一体化、錯綜する利害関係/3 決定権限の集中と政局にあけくれる人びと/日本財政の最後の守護者/政争を繰りかえした政友会と民政党/皇道派と統制派の対立/軍部の分断、政党との連携/内閣機能の強化/高橋のリーダーシップがまねいた軍部の怨念/ある政治家に任せる、ということ/第三章 ファシズムへの道程でなにがおきたのか?/1 不安定化する経済、貧弱な生活保障/井上はなぜ理論に固執したのか/高橋財政の評価/所得と地域間、ふたつの格差/人びとの生活をどのように保障するのか/日本社会の根底にあった「惰民観」/2 民主主義の後退か? 不自由への逃避か?/「呉越同舟」という分断の論理/社会保障をめぐる女性の運動/高橋と社大党の共通性/批判より対案、政策よりも権力/力を発揮した官製の国民運動/日本精神へと接続した共同体主義/都市部における労働運動の状況/「ファシズム前夜」におきていたこと/第四章 ファシズムの条件をさぐる──ドイツとの対比から/1 第一次世界大戦の敗北がもたらしたもの/ヴェルサイユの屈辱とハイパーインフレーション/一党独裁を成し遂げたドイツ/一網打尽にされた中間団体/2 雇用創出から軍備拡張へ/恐慌からの脱出と緊縮財政/中央銀行にたよった複雑な財政運営/中央銀行への依存とその経済的、政治的、社会的合理性/財政の「質」から「量」への転換/充実していたドイツの社会保障/分断の道具としての財政/3 憎しみが憎しみをよぶ呉越同舟の政治/社会民主党と共産党の対立/ヒンデンブルクと大統領緊急令/シュライヒャーの暗躍/パーペンの意趣返し/ファシズムという均衡/第五章 強まる将来不安、崩れ落ちる民主主義/1 経済の衰退と社会の分断/疲弊する中間層/「分断社会」という言葉の意味を考える/社会保障の根底にあった通俗道徳/つよまる憎しみと嫉妬/2 崩壊する財政規律、よわりゆく予算統制/中央銀行への依存/高橋財政と現代の決定的なちがい/防衛費とインフレ対策/普遍主義の広がりをどのように評価するか/「103万円の壁」から本当の問いを透視する/3 あとずさりする財政民主主義/予備費を使いきり、穴うめする/見えない債務、見えない基金/やせおとろえていく「自治」/MMTが見落としているもの/誤解される財政民主主義/4 混迷をふかめる政治と社会/「野党共闘」が意味するもの/〈小さな権威主義〉の登場/内閣人事局と政治的リーダーシップ/参加と強制の分岐点/中庸の道をさがしつづける努力/問題の複合性と私たちの態度決定/終章 エクストリーミズムをのりこえる/「ファシズム前夜」からみた日本のいま/負の均衡としての〈ぼんやりとした不安〉/参加からつぶやきへ/広がるエクストリーミズム/ポピュリズムとエクストリーミズムの結合/自由と民主主義を調和させる/財政の危機、社会の危機/互酬と再分配からなる財政/なぜ税金は重要なのか/ライフセキュリティをなぜ提唱したのか/高橋是清の復活か、社会を成長させる公共性の再生か/注/あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

うえぽん

58
財政社会学者が、日独の20世紀初頭の財政史の共通構造と現在との比較により、財政の本来の姿を取り戻す地道な努力の必要性を説いた本。日独ファシズム前史の共通要素として示した8つの評価軸は、政治経済社会の非健全性を示す分析ツールとして使えるだろう。財源論を中心とした財政民主主義の重要性も説く。国も地方も、財源論をセットにせず、歳出(又は歳入の削減)のみを議論する局面が多いことは、財政民主主義がうまく機能していない証左。さらに将来世代等の利害もビルトインした意思決定への努力はなお一層困難な課題と言えるだろう。 2025/08/28

けんとまん1007

51
まさに、今、読むべき本。自分にとって、平易な内容ではないが、それでも井手さんの思考が伝わってくる。社会を構成するものは何で、福祉(自分は経済も含め全体としてこの言葉に行きつくと思っている。人が生きるためには福祉。)を維持するにはどうすべきか。それが、財政の視点も含めて述べられているので、伝わるものが違う。政治も経済も人も、今しか考えない風潮が強くなる一方。いつまで、薄っぺらな意味での成長の2文字に拘るのか。財政的裏付けのない空疎な言葉がもてはやされるからこそ大切な視点がある。2025/10/16

buuupuuu

21
財政は連帯と共助のしくみだという。どのようなニーズがあるのか。皆がどう負担しあってそれらに対応していくべきなのか。適切な連帯感の下で民主的に決定していかなければならない。そしてこのような連帯と共助のしくみが、各人の自由を保障するのである。著者は、「ファシズム前夜」の日本やドイツで、財政に対する民主的なコントロールが失われていった過程を詳述している。そして現代の日本もまた危機的な状況にあるという。現状への諦念から人々は極端な立場へと惹きつけられるのだが、著者は、中庸こそが財政の本質であると訴えている。2025/10/06

Francis

18
「幸福の増税論」などの著書で民主主義的な手法で財源を確保したうえでベーシックサービスを拡充することを提唱している財政社会学者井手英策さんの最新著。単行本として書かれただけあって内容は一般向けでなく研究者向けである。井手さんのこれまでの研究成果を総動員して書かれた感がある。第一次世界大戦後のドイツ・ワイマール共和国、そして金融恐慌後の日本での高橋是清による「高橋財政」の歩みを財政史の立場から振り返り、現代との共通点相違点を探る。2024年衆院選、2025年参院選で日本政治の混迷はますます深まった。(続く)2025/09/15

おやぶたんぐ

9
この本も、語り口は平易でありながら内容は手強い。安易な“いつか来た道”“軍靴の響き”論には与しないことを明言しつつ、現状が“鋭くない危機下”であるが故に、事態は深刻であることを指摘する。中野剛志(「富国と強兵」ttps://bookmeter.com/reviews/69375610)らが説くMMT(巨額の支出で財政は破綻しないとする現代の貨幣理論)が、果たして著者が懸念するような財政民主主義の形骸化をもたらすのか、正直さっぱり分からない。が、落とし所を見いだすための対話が必要なことだけは(以下コメ欄)2025/12/17

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