内容説明
大らかな性格で孫に優しい偉大な人間国宝の祖父。氷のように冷たく息子に無関心な轆轤の名手の父。物心つく前に母親を亡くした少年・城は、陽と陰のような二者の間で育ち、悩み、苦しんでいた。父に認められたいがゆえに歪んでいく心。それは宿痾のように精神を蝕んでいき……。備前市伊部を舞台に、備前焼窯元父子三世代の心の闇に斬り込み、愛と憎しみの狭間でもがく人間たちを描いた家族史。
【著者略歴】
遠田潤子(とおだ・じゅんこ)
1966年大阪府生まれ。大阪府在住。関西大学文学部卒。2009年、第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『月桃夜』でデビュー。『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」で第1位、『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」で第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞、『銀花の蔵』が第一六三回直木賞候補に。他の著書に『アンチェルの蝶』『ドライブインまほろば』『廃墟の白墨』『紅蓮の雪』『人でなしの櫻』『邂逅の滝』『ミナミの春』ほか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
197
遠田 潤子は、新作中心に読んでいる作家です。本書は、備前焼窯元人間国宝家族三代大河愛憎劇の感動作でした。人間国宝の家族は、相当大変なんでしょうね。 https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/tenjounokaen/2025/11/21
hiace9000
155
奥深く力強い美しさをもつ「備前焼」。生み出される過程で器のうちに刻まれた赫々たる火焔の記憶、人の及ばぬ炎の暴力を「業」として小説に映し、練り込み焼き上げた今作。人間国宝・深田路傍、天河、城の三代にわたる陶芸一家が世代を超えて抱える父子の断絶の業、その非情で峻烈なる連鎖を断ち切ることの葛藤と難しさ…。陶芸の奥深さと備前焼のもつ世界観そのままに土の手触りと匂いで包み、火焔の熱と光で読み手を炙りながら引き込んでゆく。「熱」の対極にある、哀しみを湛えた『スラブ舞曲』の短調の旋律が、静かに作中に流れ続けているのだ。2025/12/15
いつでも母さん
152
この手が、この体と心が愛されたいと叫んでる。父親であり、師であり、敵手であるのが辛い。三世代三人の男たち。人間国宝の祖父、轆轤の名手の父、そしてまだ何者でもない自分。備前焼窯元一家の『継承』と言う愛憎劇を、遠田ワールドの香りと共に、1300度の焔を身体全部で浴びてしまった感じだ。私の大好きな哀しい男は、最期まで哀しく優しくて、その愛に胸が熱くなる。路傍、天河、城と続いた備前焼の血は灯へと繋がれていくのだなぁ。2025/10/26
あすなろ@no book, no life.
139
一日で夢中になって貪って読了。親子や血縁は見えぬ海である。そこには1,200度から1,300度喃々とする天上の備前焼の釜焚きの焔が紅くある。遠田氏の作品は正直、数作しか読んだ事はない。あらすじとこの読メでも読友さんの評判より新刊で購入して置いたもの。でも、僕の今年の新刊購入本で一番の座に輝くのではないかという読後の予感が今堪らないのである。血脈の謎、焼物への描写、数世代に渡る親と子の筆致。特に後半からの時折僕の涙腺を数行で緩める心理描写が凄いと思ったのである。2025/11/22
ちょろこ
122
胸を焦がす一冊。陽だまりのような人間国宝の祖父、氷のような父。そんな正反対の二人の狭間で揺れる息子、城の苦悩を主軸に備前焼窯元父子三世代を描いた物語。終始、家族の不協和音が苦しみやせつなさの焔となってチリチリと胸を焦がす時間だった。反発、言葉を重ねてわかり合えるまでの遠い道のり、回り道を経て相手の知られざる一面、見ようとしなかった心の奥を知った時ほど自分の中で何かが大きく変わる瞬間はないと思う。終盤は誰もの溶け出す時間、流れゆく胸の澱に涙なくしては読めない。時と愛が焼き上げた家族の器を見た気がした。圧巻。2025/10/23
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