内容説明
『侍女の物語』前夜のアトウッド
世界的作家アトウッドの初期短編集が待望の復刊。キャンパスで繰り広げられる奇妙な追跡劇(「火星から来た男」)、記者が陥る漂流の危機(「旅行記事」)、すれ違いから各々孤独を深める夫婦(「ケツァール」)、適性に悩む医者の卵がある少女に向ける感情(「訓練」)、下宿屋で巻き起こる異文化をめぐる騒ぎ(「ダンシング・ガールズ」)など――アトウッドのぞくぞくするような「巧さ」が詰まった七編を収録。あからさまにではなく、ほんの少しだけ垣間見せるというやり方で、日常に潜む違和や世界の綻びをアトウッドは示してみせる。
「ことに「キッチン・ドア」で描かれる、形のない、だがはっきりと肌で感じる破滅の予兆は、のちの『侍女の物語』や〈マッドアダム〉三部作のディストピア世界の前日譚と見ることもでき、世界のあちこちで不穏な狼煙の上がる二〇二五年に読むと、これを訳した当時よりずっと生々しい実感をともなって迫ってくる。およそ五十年前に書かれたにもかかわらず、これらの物語は少しも古びていない、どころか読むたびに「今」の物語として更新されつづける。そのことに何よりも驚きを感じる」(「復刊によせて」より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
28
【火星から来た男 = The man from Mars】 こういうタイトルだが、別に宇宙人は登場しない。大学に通う主人公が、西欧系ではない男性に出会って、友達認定される。無下にもしないで適当にあしらっていたら、家にまで訪問される。北と南という語句が登場するので、おそらく男性は朝鮮半島の出身。確かに、行くところ行くところどこにでも現れたら気持ち悪いかもしれないが、暴力をふるったわけではない。にもかかわらず、警察を呼ぶのは、彼の国籍が潜在的な差別意識に繋がったのでは。2025/12/13
くさてる
28
89年に刊行されたものを読んでいたので再読になるのかもしれないが、やはり「キッチン・ドア」が圧倒的。立ちつくしている中年女性とその脳裏に浮かぶ終末への予感、ただそれだけの内容なのに、ほんとうにどうしたらこんなすごいものが書けるのかと思う。「老いぼれを燃やせ」でも感じたけれど、当時読んだときよりもさらに切迫感をもって現実がこの世界に近づいている気がした。2025/12/09
ズー
22
アトウッドの翻訳と言ったら鴻巣さんだと思っていたので、あれ?岸本さんじゃん!とびっくりしたが、50年前に翻訳されていたんですね。失礼しました…。それにしてもアトウッド、今の作品も本当に現代的で面白いけど、昔の作品もそうなのってすごい。全然古臭くなくて予言めいたものすら感じる。侍女の物語の卵を見た気がしたし。岸本さんの読後の表現がとても納得がいった。そうなのよ。読んでる最中は楽しいんだけど、終わり方が納得いかないとかではなく、あれ?って感じなのよね。そこがまたいいんだけれども。残りの作品も復活して欲しい。2025/12/16
アリーマ
16
『侍女の物語』のマーガレット・アトウッドの初期短編集。1989年に刊行されたものの再刊。独特な不穏さが通奏低音のように流れ続ける、イヤミス感のある短編が7本収録されている。不穏ではあるが、読後感は悪くなく、ちょっと捻った軽い痛みは残るがイヤな感じはしない。なるほど、そうか、と思いながら読んだ。岸本佐和子さんの翻訳が端正で美しかった。★★★★2025/12/16
まさ☆( ^ω^ )♬
9
マーガレット・アトウッドは多分初読み。「侍女の物語」が積読中ですが、岸本さんの訳書という事で迷わずゲット。早速読んだ。1989年に刊行されたものの復刊だったのね。すっきり終わらない、モヤモヤが残る物語たち。目を背けたいのにどうしても見てしまう感覚。面白かった。底本に納められた14作中の7作なのだとか。残りの7作も是非読みたい。もちろん岸本訳で。2025/11/06
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