内容説明
すべての権力を市場の統治下に取り戻せ! フーコー、マルクス、ハイエクから対労組マニュアル、企業CM、経営理論まで、ネオリベラリズムの権力関係とその卑しい侵食の歴史を鮮やかに描き出し、現代の社会構造と市場の問題をえぐり出す名著、待望の刊行。
目次
序章
第Ⅰ部 言うことを聞かない労働者たち
第1章 労働者の不服従
第2章 人的資源
第3章 治安の悪化
第4章 組合との戦い
第Ⅱ部 マネジメント革命
第5章 神学的危機
第6章 倫理的マネジメント主義
第7章 マネージャを規律訓練する
第8章 カタラルシー
第Ⅲ部 自由企業への攻撃
第9章 私的統治の拠点
第10章 観念の闘争
第11章 どう反応するか?
第12章 企業は存在しない
第13章 警察的な会社理論
第Ⅳ部 異議申立者たちの世界
第14章 企業の活動家対抗策
第15章 支配的対話の産物
第16章 問題解決マネジメント
第17章 ステークホルダー
第Ⅴ部 新たな規制
第18章 ソフト・ロー
第19章 コスト・ベネフィット
第20章 政治的エコロジー批判
第21章 責任化する
第Ⅵ部 統治不能社会
第22章 民主主義の統治性の危機
第23章 チリでのハイエク
第24章 権威主義的リベラル主義の諸々の出自
第25章 政治にご退位ねがう
第26章 民営化のミクロ政治学
結論
シュミット=ハイエク主義の時代――訳者あとがきにかえて
原注
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
msykst
17
1970年代に高まった労働者の不服従や社会運動は、深刻な「民主主義の統治性の危機」をもたらした。社会防衛のための統治技法は如何にして狡猾かつ巧妙に再編されたのか。紆余曲折の結果編み出されたのは、シャマユーが「ネオリベラル主義のミクロ政治学」と呼ぶものであり、それは政治的な対抗を市場選択の問題に置き換えた。それは人々の力を脱中心化し、分散させる。それはイデオロギー云々の話ではなく、シンプルに政治テクノロジーである(P350)。2025/01/04
Mealla0v0
12
フーコーが描き出した統治性の危機は、福祉国家の危機から新自由主義的統治への移行に対応したものであったが、本書が注目するのはもっと卑俗なもの、ビジネス界の言説である。ビジネス界は統治性の危機にどのように対応したのか。興味深いのは企業という組織の私的統治である。労働者を直接に統治したのは企業であり、市場のアクターもまた企業である。企業の統治原理は、官僚制に近似したマネージメントの技法など、自由主義的な統治技法=見えざる手とは異なる。それはシュミット=ハイエク路線の統治の在り様であるという。2022/05/19
PETE
5
経済学、そして特に経営学が、学問であるどころか、労働運動や環境運動などに対して闘争方法、遅延・言い訳・誤魔化し戦略を経営陣に提供することに終始してきたかの目録。 究極はハイエクによるピノチェト支持。2022/08/09
河村祐介
3
なんつうかTwitterやらに溢れる自称保守の方々の冷笑型抑え込み言説のルーツというかネタもとというか原典のオンパレードというか。ハイエクなどのネオリベ古典と、ポストフォーディズム的な経営・マネージメント論と、異議申し立て運動を飲み込み悪魔合体というか。非常にいまの日本の政体の分析に良きツールになるというか。2022/07/22
檜田相一
2
60年代末の対抗文化によって、工場で若者は反抗的になり、ボイコットや株主総会の乗っ取りという企業に対する攻撃が盛んになる。しかし、ビジネス界はうまくこうした攻撃を統治する術を獲得し、新自由主義を拡大させてきた。そして、グローバル企業や、チリのピノチェト政権への支援といった実例から、「自由」という言葉を借りながらいかに新自由主義勢力が権威主義を志向してきたかが明らかにされる。2025/07/06
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