内容説明
長いスランプに陥った小説家はやけっぱちになり、唐津を旅することに。陶芸体験をした窯元の夫婦から、水神にまつわる不思議な伝承を聞く。今でいう「難民」であったという流浪の水神は、戦国時代、いかにして秀吉の朝鮮出兵を止めようとしたのか……。『かたづの!』の著者が、かつてないスケールで歴史と現代を深く結びつける長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
178
言い伝えによれば。河童難民説から水神夜話へ。唐津の窯元夫婦が語る、猿と虎が仕掛ける唐国への戦、震え涙する銀非の器、魚屋の倅小西行長の大法螺…水神たち目線で秀吉による朝鮮出兵を描く斬新さ。関西人としては太閤さんがどうしようもない暴君に描かれるのが辛いですけど、史実だとしたらどうしようもない。2025/11/16
starbro
147
中島 京子は、新作中心に読んでいる作家です。本書は、著者の新境地でしょうか、唐津水神伝承歴史ファンタジーでした。私は、唐津に行ったことがありますが、大きな蜘蛛が沢山いたイメージが強いです🕷️🕷️🕷️ https://www.shinchosha.co.jp/book/351352/2025/12/04
たま
82
『かたづの』を思わせるファンタジー歴史小説?楽しく読んだ。小説家が唐津に旅し陶芸家と出会う、随筆のような枠組みの中で、水神の視点から秀吉の朝鮮侵略が語られる。飯嶋和一さんが『星夜航行』で詳述した、朝鮮侵略の無謀と無惨、秀吉を諫められず嘘に嘘を重ねる小西行長らの外交の失敗と、水神の醸し出すとぼけた味わいが対照的で心を掴まれる。ちょうど高市首相の〈台湾有事-存立危機事態〉発言がメディアを賑わせており、四百年前の話と切り捨てることのできない、切実な問題であることをひしひしと感じながら読んだ。2025/12/05
星群
80
豊臣秀吉の朝鮮出兵を阻止しょうと奮闘した水神たちの歴史ファンタジー。水神=河童(難民)って発想はすごいなぁ。だから期待値上げすぎました。楽しみにしてたんだけど、なんか小難しかったです。あんまり京子ユーモアも効いてなかったし、出だしは期待できそうな雰囲気だったんですけどね。魚屋こと小西行長と水神ニタのやり取りが面白かったかな。サワタロー・ナミエ夫婦は、やっぱり水神の末裔だったのかなと密かに思ってます。2025/12/02
のぶ
65
中島さんの歴史ファンタジー。スランプに陥った作家の主人公が、気分転換に唐津を訪れた。そこで巡り合った人から聞いた「水神」の話。その話は秀吉の朝鮮出兵に関わるものだった。今までの中島さんの作品にはない不思議な読後感を持つ一冊だった。2025/10/30




