内容説明
「俺、昔、喋る狼に会ったことがあるんだよ」カナダの温帯雨林にやってきた三人の日本人大学生。狼の生態に関するフィールドワークのかたわら、ひとりが不思議なことを言い出して──(表題作)。大人になる前の特別な時間を鮮やかに切り出した、四つの中編を収録。『叫びと祈り』『リバーサイド・チルドレン』の著者が贈る、ミステリ仕立てのエモーショナルな青春小説。/【目次】美しい雪の物語/重力と飛翔/狼少年ABC/スプリング・ハズ・カム
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
165
記憶をテーマにした青春ミステリ4編。意味不明な謎を抱えて成長した若者が意外な手がかりから過去を思い出し、隠された真相を探り当てるまでを描いていく。特に「スプリング・ハズ・カム」は、秦基博の同名曲にある「音速で伝わる僕らのメッセージ」に通じる切なさを感じるし、表題作はイタリア映画『刑事』の有名な主題歌を覚えていたため何となく想像はつくが、真実を知るのと友情の再確認が同時に満たされるラストは美しい。いわゆるコージー物とはひと味違うが、友人らに助けられて人生の貴重な宝物を探す物語は文学に近い感動を与えてくれる。2026/01/20
ちょろこ
122
別の良さの一冊。春夏秋冬の謎を描いた4篇のミステリ短編集。改めてこの作家さんの紡ぐ文章と優しさが好き。古い日記、友が遺した一枚の写真、喋る狼、卒業式の事件と…ひたすら心地よさ、せつなさと共に心を掴まれ続けた。短編というコンパクトな世界に詰め込まれた謎解き、大人へと羽ばたく前のかけがえのない時間、そして全てが氷解した後の"今まで"を包むような優しさ。それらが見事に溶け合い大きな余韻の波が押し寄せる。そんなミステリとは別の良さを味わえるのがいい。二度と戻らないあの時。「スプリング・ハズ・カム」は涙のピカイチ。2026/01/07
buchipanda3
87
出ると言われて結構な時間が経っていたが何と著者の新短篇集が登場。読み始めて文章が描き出す澄んだ光景を頭に浮かべながら、あぁこんな感じだったと。書かれた時期はまちまちだがいずれのミステリも著者らしさを堪能できた。謎を解くことの意味、謎が解けたことの痛快さより、その氷解がもたらした感傷と救いの方が程よい優しさと共に心の中を満たし続ける。実は謎もリドルストーリーのように残っていて、本当の正解が明確に示された訳じゃない。でもどの篇もこうだったらいいなと思える答えを望んでいる自分がいた。またそんな謎解きを次作でも。2025/11/29
がらくたどん
56
もともとミステリ・フロンティアとは相性良しなのだがそれにしたって花丸すぎる♪ミステリの登場人物を「愛おしい」と思った事は何度もあるけど「謎」そのものが愛おしかったのは初めて。大人になりきらない思春期の少年少女が心に抱えたささやかだけど手放せない謎。その謎自身がどうして「謎」になってしまったのか分からずに戸惑いながら小さくはにかんで彼や彼女の大事な記憶の欠片になれる日を待っている。古い日記帳、遺された写真、しゃべる狼、卒業式の応援歌。ほどけた謎を抱きしめてみんなちょっとだけ大人になった。託された余韻が嬉しい2026/01/23
オーウェン
55
2作目から12年の時を経ての3作目。 4編の短編だが、すべて青春模様の中でのミステリという作り。 「美しい雪の物語」「重力と飛翔」そして表題作。 どれも余韻を残すラストが印象的。 そして一番切なさが際立つのが「スプリング・ハズ・カム」。 高校卒業後15年たち開かれた同窓会。 卒業式で流行りの音楽を鳴らした放送室ジャックが行われ、後に教師たちに叱責を食らう。 その犯人が分からない中で、導き出される答え。 タイトルに懸けられた答えと、当人たちの想いが駆け抜けていくのが何とも切ない。2026/01/06
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