内容説明
今では忌み嫌われるハエやゴキブリ。しかしハエは小さくかわいらしい生き物と見られていた時代があり、ゴキブリは豊かさの象徴だったとする説もある。こうした虫たちは、いかにして人間の手で排除すべき〈害虫〉となったのだろうか。本書はその背景を丹念に読みとき、植民地の統治、「清潔」な近代都市の成立、戦争における伝染病の蔓延や毒ガスの開発などを契機に、近代国家が人々の自然観を組みかえてきた過去を明らかにする。文庫化にあたっては、テクノロジーの発達による害虫の「消滅」などを考察した補章を収録。小さな虫から、人と自然の関係に織り込まれたダイナミックな歴史が見えてくる。
目次
プロローグ/第一章 近世日本における「虫」/1 日本における農業の成立/2 江戸時代人と「蝗」/3 虫たちをめぐる自然観/第二章 明治日本と〈害虫〉/1 害虫とたたかう学問/2 明治政府と応用昆虫学/3 農民vs明治政府/4 名和靖と「昆虫思想」/第三章 病気──植民地統治と近代都市の形成/1 病気をもたらす虫/2 植民地統治とマラリア/3 都市衛生とハエ/第四章 戦争──「敵」を科学で撃ち倒す/1 第一次世界大戦と害虫防除/2 毒ガスと殺虫剤/3 マラリアとの戦い/エピローグ/新書版あとがき/補章 害虫の誕生再考/1 共生生物としての害虫/2 敵としての〈害虫〉/3 気象としての害虫/4 〈害虫〉の消滅? /文庫版あとがき/図版出典一覧/註
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
42
昔はゴキブリは富裕の象徴(ゴキブリは密閉性が強く、暖かい場所にしか現れなかったから。因みに童謡の『コガネムシ』はゴキブリを指す)だった。他にも蠅、飛蝗なども「手に負えない自然」として共存していた日本。その虫たちが何時から害虫と認識され、駆除に躍起になる対象となったのか。それを紐解く本書から文明開化による除虫技術の輸入、都市イメージの固定化キャンペーン、戦争による毒ガス技術を応用した駆除技術の発展などを明かしていく。だが、補遺によって耐薬を備えた害虫が増えている事の指摘など、虫も進化しているのが心憎い。2025/08/10
かふ
18
人の合理的世界では害虫は滅亡した方がいいのたが、それが文化となっている地域では絶滅政策は住民感情に反するという。植民地政策で害虫を駆除するために自然そのものを破壊してしまうことだと書かれてあり、虫送という文化は害虫駆除とともに消えていったという。それは都市化する衛生学なのだ。あるいは共存社会でなく分断社会を生み出すということ。コロナ禍によって引き起こされた隔離政策は今も分断社会として影響を与えている。害虫という概念は自然界にはない。それを害虫と思うのは人間の生存戦略であり、それが自然を破壊していく。2025/08/27
晶
4
昆虫を害虫と認識する過程がとてもおもしろかった。徹底的に害虫を排除するのがよくないのはわかるけど、だからと言ってそこら中に虫がいる環境で暮らすのは嫌だなと、1匹の虫も見ない快適な自室で読みながら思う。なぜ虫を見るとゾワッとするのか、昆虫展に行くのはもはや怖いもの見たさになってしまっているがそれはなぜなのか、心理面から考察した本も読みたい。「虫のヒト」、書いていただけませんか?2025/08/24
バッシー
4
昆虫と人間との関係、変えられていく人々の意識、いずれも興味深い内容。おもしろかった。2025/08/13
Go Extreme
3
https://claude.ai/public/artifacts/8a39e9ac-9284-473b-bdaf-774258f886fa 2025/07/17
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