内容説明
総合出版社・立象社で社会派オピニオン小冊子を編集する橘泰介は、担当の著者・黒岩文子について、同期の週刊誌記者から不穏な報せを受ける。児童福祉の専門家でメディアへの露出も多い黒岩が、ある女児を「触った」らしいとの情報を追っているというのだ。時を同じくして橘宛てに届いたのは、黒岩本人からの長文メール。そこには、自身が疑惑を持たれるまでの経緯が記されていた。消息不明となった黒岩の捜索に奔走する橘を唯一癒すのが、四人一組で敵のモンスターを倒すスマホゲーム。その仮想空間には、橘がオンライン上でしか接触したことのない、ある「かけがえのない存在」がいて……。誰かを「愛でる」行為の本質を暴く傑作長編!
目次
第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
27
総合出版社で社会派オピニオン小冊子を編集する橘泰介。担当する児童福祉の専門家である黒岩文子について、同期の週刊誌記者から不穏な報せを受ける物語。メディアの露出も多い黒岩がある女児を「触った」らしいとの情報と本人からの告白。消息不明となった彼女の捜索に奔走する橘を唯一癒してくれるオンラインゲームの仲間たち。様々な問題が噴出して、それぞれの正義に従い勝手に動く周囲の人々に振り回されながら、当事者として奔走する主人公は幾度もどうにもならないことを突きつけられてゆく、そんなカオスなストーリーの読後感は圧巻でした。2025/07/21
バナナカプチーノ
3
初めて古谷田さんの作品を読んでみました。朝井くんが描きそうな世界観だなーと思いながら読んでました。…が、それほど入り込めず。きわめて現代的なテーマを扱っているとは思います。他の作品はどんな感じなんだろう?2025/08/27
餅食った猫
2
まぎれもない傑作。普段疑いもしない常識を違う角度、エグい見方で捉え直してくれる。これぞまさしく小説の醍醐味だとおもう。ネコをかわいがる人たち、そこに存在するかわいがるという行為の異常さ、そんなこと書く作家今までいたのかな。自分の意思(あるいは欲望)を優先させることの難しさと、その辻褄合わせ、どうすれば筋が通るのか、を考えに考え抜いた、そんな小説です。2025/08/13
まぶりな
1
文庫で再読。大好きな作品。主人公の橘は、信念を持って社会問題に目を向けて行動している。彼のその原動力となる発端が、「ゲームを心底楽しみたいから」であることに驚かされた。橘は、自分の知る範囲で誰かが理不尽な目に遭ってると、純粋に自分の楽しいことを楽しめない人なんだろう。繊細過ぎるようにも思うが、とても優しい人なんだと思う。あと今回も、抗い難い暴力的な感情である「かわいい」について考えさせられた。面白かった。また読み返すと思う。2025/08/14