内容説明
これは私が、角川ホラー文庫編集部から依頼を受けた連作短編集です。駆け出しの私に依頼が来るだけありがたく、最初は喜んで引き受けた作品でした。しかし、短編を提出するごとに、担当編集の休職が発生している以上、これを刊行するという編集部の判断が、正しいのか分かりません。
※このあらすじは、原浩氏の強硬な主張により、挿入されたものです。編集部の意図とは相違があります。本作は、あなたが望んでいる作品です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
71
角川ホラー文庫の編集部から依頼を受けた原氏が次々と書き上げる物語。それを読んだ編集者が2人…。という現実と虚構を織り混ぜつつ恐怖を描く連作短編集。3名の編集者との打ち合わせでSNSの恐怖について書いた「トゥルージー」日常に潜む恐怖がテーマの「裏の橋を渡る」もし死ぬ人がわかったら…「らくがき」など。しかし物語を書き上げるごとに関わっていた編集者が原氏の前から姿を消す。彼女たちは何かに怯えていたというが…。果たしてこの本は本当に出版しても大丈夫なのか?ホラー文庫の役割を大胆に脚色したリアルで遊び心のある1冊。2025/09/14
眠る山猫屋
59
作家・原の元に、角川ホラー文庫側から持ち込まれた短編集の企画・・・そこから始まる怪異譚。モキュメンタリーに区分されるのかな?編集者たちとの打ち合わせを挟みながら怪談を描くのだが、構成が非常に秀逸。一話語られる毎に編集者が減っていく構成、語られた怪談もとても怖い。SNS、橋、エレベーターなど、どれも深い闇への入り口。逃げ道を用意しておいて罠を仕掛けるような作風は『やまのめの六人』の作者と知って納得。2025/10/31
佐倉
26
ひとつひとつの作品の完成度が高くどれも怖い短編集。各作品の間に原浩と担当編集のやりとりがブリッジで入る三津田信三の『怪談のテープ起こし』を思わせる構成だが、こちらはより現在のホラー小説の文脈に沿った流れになっており、作品の緊迫感を高めている。SNSを題材にした怪異、半ば依存になるような感覚と強迫感を絡めた『トゥルージー』、幼い頃の後悔が橋というどこにでもあるガジェットで訪れる『裏の橋を渡る』、緊迫感のあるやり取りが魅力的な『らくがき』、『潰える』でも印象的だった『828の1』とどれも魅力的。2025/09/01
petitlyz
22
ホラーの短編小説と、作家と編集者を挟んで全体の流れもホラーになっている感じだった。 エレベーターの話があって、エレベーターはほぼ毎日乗るのでちょっと怖いなと思った。それと、「潰える 最恐の描き下ろしアンソロジー」で読んだ「828の1」がこの作家さんの作品だったんだと再認識。印象的でよく覚えてた。面白かった。2025/10/04
Porco
21
一見モキュメンタリーホラーのようだが、モキュメンタリー風の読者を当事者として引き摺り込んでくるタイプの侵食型ホラー。有り体に言えば、話を知った人に災いが起こるみたいな「恐怖の手紙」のようなもので本作はそれに近い。しかしこの手の怖さは恐怖で心身を凍えさせるのではなく、くすぐりで驚かされるようなものなので、小説には向かないと思うし好みでは無い。近年はこの手の「貴方の怖いものは何でしょうか?」と問い掛けてくる作品を見かけることが多くなってきた気がする。2025/11/13




