内容説明
女性を無力化する一つの政治的制度としての異性愛―― 女たちは何を強いられ、何を求めてきたのか。「すべての女」の連帯は、どのように可能か。 現代アメリカを代表する詩人/フェミニスト批評家、アドリエンヌ・リッチ論集三部作、待望の復刊&完結!
女は、女であることによってのみ抑圧されるのではない。 おどろくべき高まりとひろがりをみせた70年代アメリカのフェミニズム。 しかしそのなかでなお、黒人および少数民族の女性とレズビアンたちは、人種主義と異性愛制度のもとで沈黙を強いられてきた。 アイデンティティをつきつめ、「私」と「あなた」をへだてているものと両者が共有しているものをひとつひとつ吟味しながら、新たなフェミニズムへの道を探る。シャープでしなやかな思考に貫かれた79-85年論集。 「強制的異性愛とレズビアン存在」所載。 解説、イリナ・グリゴレ(『優しい地獄』、『みえないもの』著者)
「あなた、ユダヤ人でしょう?」
十八年間の同化訓練がたちどころに反射作用をひきおこして、私は首をふり、彼女を拒み、「いいえ」と言っていた。
ほんとうは何に対して「いいえ」と言っていたのだろう?
(本文より)
感想・レビュー
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夜間飛行
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反ユダヤ的ユダヤ人、白人、レズビアン…を自認する著者。敵は父権制だけでなく、性・人種・階級の編み目に潜んでいる。強制的異性愛が女性を無力化することをあばき、その他にも制度の中にある差別や不平等に対して徹底的に抗うことを主張している。初めついて行けない所や判らない所もあったが、自伝的な章を読むうちに肯け、詩や歴史の章では鋭い洞察に感嘆した。抵抗によって弱さの認識ではなく強さの認識を引き出すという考えにも励まされた。主に女性に訴える内容だが、男の私も自分の無知を振り返り、女性の魂に少しでも触れられたらと思う。2025/08/29




