内容説明
日中戦争から太平洋戦争へと戦線が拡大し、すべてが戦争に奉仕させられる時代にも、野球場には、戦争から背を向けるように声援をおくる名もなき野球ファンたちがいた。彼らは一体何を思い、そこに何を観たのか? プロ野球創成期をノンフィクションという形で切り取り、戦争の悲惨さを語り続けてきた著者が、戦後80年を機に、これまで語られてこなかった市井の野球ファンたちの姿に焦点を当て、戦時下の野球文化を描く。 【目次】第1章 魅了された人々/第2章 襲いかかる戦火/第3章 強まる戦時統制/第4章 密かな娯楽/第5章 反骨の人々
目次
はじめに/第1章 魅了された人々/2000人からの出発/時代を読んだ文士/目覚めた野球ファン/「お尋ね」欄への投稿/野球場の建設ラッシュ/先進的な女性たち/婦人デーの試み/下町の応援団/宮様の来訪/第2章 襲いかかる戦火/野球狂大臣/帝大医師の初観戦/事変勃発で入場料が戦車に/前代未聞の球団経営/宣伝巡業の旅/軍の広告塔/白衣の勇士たちの入場/かわりゆく球場の風景/スコアボードの広告/新たな客層を開拓/第3章 強まる戦時統制/帰ってきたエース/苦悩のピッチング/ぜいたくは敵だ/新体制運動の余波/日本語化の是非/人格否定の改名/チーム名まで/日系人選手たちの選択/憲兵に追われて/スパイ摘発/危険人物/常連の経済学者/特高の監視下/東部司令部の防空計画/要塞になった野球場/第4章 密かな娯楽/開戦の日/喜びに酔いしれる人々/陸軍報道部による検閲/自発的決意への誘導/手榴弾投げの余興/軍服姿でグラウンドへ/空襲下の観戦/眉つばの戦果/飛ばないボール/延長二八回でも帰らない客/心無いヤジ/はびこる野球賭博/軍内にも汚染/八百長事件捕物帳/国策映画観賞会/第5章 反骨の人々/芸術検閲の実態/敵性語排除の研究/野球統制令の功罪/反東條の応援団長/投手失格/戦地にいる選手への想い/英雄戦死発表の日の来場者/それぞれのレジスタンス/徴兵逃れの危険な偽装工作/大学生選手/軍需工場を隠れ蓑に/軍務公用のアナウンス/怒りの声援/わずか一四人のチーム/最後を見届けた2000人/おわりに/引用・参考文献