ちくまプリマー新書<br> 自己決定の落とし穴

個数:1
紙書籍版価格
¥990
  • 電子書籍
  • Reader

ちくまプリマー新書
自己決定の落とし穴

  • 著者名:石田光規【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2025/08発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480685308

ファイル: /

内容説明

自分のことは、自分で決める――。本来善しとされるはずなのに、どこか疲れるのはなぜ? そもそも自分で決めるってそんなによいものなのか。他人の決めたことにはどこまで踏み込んでよいのか。「自己決定」をめぐるこの社会の自縄自縛をときほぐす。 【目次】第一章 自分で決めることに息苦しさを感じてしまう……個人化が進む一方で責任を求められる社会/第二章 決定に対する責任の所在……集団と個人の決定をめぐる責任の論理/第三章 決定を回避する私たち……選ばずに済ませるためのエビデンスと合理性/第四章 自分で決めたことに追いかけられる私たち……こうありたいと望んだ「自分らしさ」に囚われる/第五章 決めたことへの介入は「余計なお世話」?……一人になる決定を尊重するか、孤独・孤立を問題視するか/第六章 緩やかに決められる社会へ……決められない・誤ってしまう「弱さ」を受け入れるには

目次

はじめに/第一章 自分で決めることに息苦しさを感じてしまう/1 自分で決めることを求められる時代/集団の時代から個人の時代へ/物的な豊かさと決定/個人を尊重する思想と決定/個人化した社会と自分で決定する時代/自分で決める社会の重圧/2 私たちは好きなように決められるのか/自分で決められる範囲/求められる倫理的・理性的な自己/3 私たちはほんとうに決めているのか/自己決定と責任の関わり/責任ある主体という考え方/自分で決めることの外部性/4 責任とはいったい何なのか/意志決定の裏側にあるはたらき/同じ意志決定を行っても同じ結果になるわけではない/社会における責任の役割/自己決定・自己責任の厳しい社会/ここまでのまとめ/第二章 決定に対する責任の所在/1 私たちの決定を左右する責任/思わぬバッシング/自己決定のふたつの側面/責任に左右される決定/2 責任の強化による決定の抑制/お酒を飲むことの責任/世論と法律をつうじた責任の強化/3 個々人の決定と集団が課す責任のせめぎ合い/イラク人質事件の概要/ふたつの議論/シゲルさんの話と人質事件との違い/集団の決定と個人の決定/集団の決定・責任が個人の決定を圧迫する社会/集団の決定の正しさという問題/個人と集団の決定の重み/4 親密な関係における決定と責任/恋愛についての新しい感覚/男女関係と決定・責任/責任を作りだし自己決定を阻む人たち/結局、どうすればよいのか/5 男女関係のこれから:決定と責任の論理を超えて/男女関係における責任の転換/性や恋愛にまつわる同意・決定の特殊性/恋愛からの撤退という議論/より重要になる双方の信頼/第三章 決定を回避する私たち/1 自己決定の範囲を広げる物的な豊かさ/フミオさんの不満/豊かになったから決められる/2 モノやサービスのイメージを消費する生活/機能的消費と記号的消費/記号的消費の時代/3 記号化され、見定められる日常生活/豊かな文化と「見定め」の発生/企業により割り振られる記号/4 見定められるリスクの回避/安心できる自己決定/やりたいことより迷惑が気になる/人の目を気にする私たち/リスクを回避するさまざまな手段/「エビデンスを示してください」/5 合理的に決定をする私たち/合理性という着眼点/選べるからこその合理性/動画視聴とコスパ、タイパの論理/コスパで考える人間関係/目的や利点がなければ人とつきあう必要はない/コスパ、タイパの落とし穴(1):自らがコストに転じるリスク/コスパ、タイパの落とし穴(2):閉じられる可能性/第四章 自分で決めたことに追いかけられる私たち/1 楽しかったはずなのに苦しくなってしまう/楽しめなくなった推し活/決めたことが重荷になる/趣味を楽しめなくなった/自分らしさという檻/2 進路選択という檻/人生のパイプライン・システム/上位のパイプは転落を恐れ、下位のパイプは上位を無関係と考える/漏れの目立つようになったパイプラインと自己決定/下位のパイプに蔓延するあきらめ/3 タワマン文学から読み解く、決めたことにこだわる息苦しさ/勝者の記号を追いかけるタワマン文学/タワマン文学とパイプラインの親和性/登場人物と構成/タワマン生活を望んださやかと綾子/自己肯定の裏側にほの見える苦悩/満たされないタワマン生活/それでも選ばれるタワマン生活/4 離脱しにくい自己決定/自分で決めたことの息苦しさ/硬直的になりやすい個々人の決定を尊重する社会/第五章 決めたことへの介入は「余計なお世話」?/1 自分で決めたことなのだから放っておいてほしい/お節介の難しさ/人の決定には口を挟まない/キャンセル界隈/2 社会現象になった孤独・孤立/孤独・孤立という視点/つながりを選び一人になりやすくなった社会/イヤなつながりからの離脱と孤独・孤立の不安/孤独・孤立は問題なのか/孤独感の強い人、孤立する人の実際/3 一人になる決定を尊重するか、孤独・孤立を問題視するか/孤独・孤立と自己決定のせめぎあい/難しい予防的な対策/自己決定と向き合う孤独・孤立対策/4 孤独・孤立と自己決定(1):孤立を自己決定と見なすことによる排除/私たちは一人で生きていくことを決めているのか/孤立を決定として解釈する危うさ/結果としての排除の見落とし/5 孤独・孤立と自己決定(2):介入についての考え方/「つながりフレイル」になりやすい私たちの社会/求められるつながりのお膳立て/強制や介入とどう向き合うか/第六章 緩やかに決められる社会へ/1 発生する問題(1):社会の過剰な反応/ここまでを振り返って/責任の体系による統制/自由になるほどに整備される経路/2 発生する問題(2):個人の過剰な反応/個々人の決定に立ち入らない/肥大化する自分/責任概念の転換/自己決定の社会を振り返る/3 自己決定を捉え直す/それでも自己決定を尊重する/「イマジナリーな領域」という視点/「自己責任」から「弱い責任」へ/「硬質な自己決定」から「緩やかな自己決定」へ/4 緩やかな自己決定ができる社会へ/「弱い個人」が決定する社会/相手の決定の背景に思いを馳せられる社会/個の分断ではなくつながりの再生へ/参考文献一覧/あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

よっち

25
自分で決めることは本来善しとされるはずが、どこか疲れるのはなぜなのか。自己決定を巡る社会の自縄自縛をときほぐす1冊。自分で選んだことに苦しくなるのはなぜか。そこには現代社会の個人化や自己責任の風潮が背景にあって、特に日本では集団気質と自己責任論が強く結びつき、声を上げなければ孤立する構造や、自己決定が尊重される一方で、選ばなかった人や選んで苦しむ人に冷淡な視線が向けられる現実、選択の自由が不自由さを生む状況を見ると、著者の提唱する他者との関係性の中で柔軟に選び直せる社会は確かに必要なのかもしれないですね。2025/10/08

kuukazoo

18
自己決定は人の自由に関わる大切な権利だけど自己責任がのしかかったり孤立を招くなど辛い状況に人を追いやったりする。また誰もが選択肢を持てて「決められる」わけではない。著者は今のような「強い」自己決定による社会的つながりの希薄化や格差の固定を懸念している。確かに自己決定と自己責任をくっつけ過ぎず、もう少し他者が介入できたりやり直しのきくゆるさがあった方がいいのかもしれない。当たり前と思われることを見直すよい機会ではあった。2025/10/04

takka@ゲーム×読書×映画×音楽

14
理性など西洋哲学に疑念を持っていることから、発売日すぐに手に取った。自分で決めるという自由は一見良さそうに感じるが、責任を負う・孤独に陥ることなどマイナス面も大きい。例えば、孤独は肥満・運動不足より死亡するリスクが高まることが研究で判明している。なぜこのようになったのか。読んでいて感じたことは、ムラ社会・空気など過去から研究されていた人間関係からの脱却。物・サービスが豊かになり「今・ここ」が1人で楽しめるようになったことが影響しているのではないだろうか。コミュニケーションも体力と同様に鍛えないと衰える。2025/08/11

まゆまゆ

13
もともと集団主義的な社会だった日本が個人化社会へと変化している中であらためて自己決定に関して考察していく内容。自己責任論が日本社会を覆ってから20年以上がたち、SNSをはじめ日常生活上で押し付けられるルールとそれを違反した者に対する責任論はますます強まっている。他者の決定に対し、背景を想像できるくらいの緩いつながりをどう紡いでいけるか。2025/10/09

masabi

9
自分で自由に選べるようになったことで責任を背負わなくてはならなくなった。自由な選択が息苦しさにも繋がる。自己決定と自己責任が不干渉と他人への無関心を助長するとして、その背景の「強い個人」像から「弱い個人」像への転換を提唱する。緩やかな自己決定社会では本書で述べられた息苦しさは軽減されるのか、どんな社会になるのかも触れてほしかった。図らずも孤独を扱った本だ。あとがきで言及していた場によるつながりはサークル部屋やスナック、遊び場の公園のイメージだろうか。2025/10/20

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/22762916
  • ご注意事項

最近チェックした商品