ちくま新書<br> 商人の戦国時代

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ちくま新書
商人の戦国時代

  • 著者名:川戸貴史【著者】
  • 価格 ¥1,045(本体¥950)
  • 筑摩書房(2025/08発売)
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  • ISBN:9784480077042

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内容説明

中央権力が衰退し混迷する戦国時代、旧来の秩序を破る新興商人を、権力者たちは取り締まることが困難になった。新旧商人の縄張り争い、金融業の出現、拠点都市の建設、利権ビジネスと借金トラブル、御用商人の暗躍、世界貿易への参入、「楽市・楽座」の実態――。幕府、朝廷、大名、寺社、海外勢力、様々なプレイヤーが乱立する時代に、商人たちは何を頼り、秩序と自由の狭間を生き延びたのか? 史料に現れる、余りに人間的なエピソードの数々から、乱世を生き延びる戦略を学ぶ。

目次

はじめに/プロローグ──戦国時代の商人とはどういう存在だったのか?/商人たちの訴え/戦国時代の利権ビジネス/中央権力の衰退で揺らぐ秩序/実は流動的だった「商人」という身分/中世商人はどこから来たのか?/特権を与えられた商人たち/「座」の盛衰/第1章 戦国金融道──京都商人の栄枯盛衰/戦国時代のサービス業/様々な職人と売り子たち/船で運ばれた商品たち/塩の戦国時代/中世最大級の淀魚市/大坂湾を掌握した三好氏/塩の利権をめぐる争い/戦乱の時代の樹木需要/京都にはすべてが集まる/室町幕府のぜいたく三昧/戦国金融道──金融業者の登場/戦国時代の利子はどれくらいだったのか?/ついに不満が爆発する/比叡山延暦寺の抵抗活動/権門経営は守護代にアウトソーシング/幕府財政に関わった「野洲井」/野洲井と賀茂社との密接な関係/悪銭混入という社会問題/悪銭とは何か?/金融業者たちが躍動した京都/天皇家の資金管理を担った商人/土倉とは何か?/第2章 ほんとうの「楽市・楽座」──兵庫・堺・博多・伊勢大湊/流通拠点での商業/瀬戸内海運の重要湾口都市「兵庫」/アジアとの貿易港「堺」/大名権力の支配下へ/「講」による自治/戦国時代の堺商人たち/「納屋」の正体/堺商人の家から大名になった小西行長/茶の湯と鉄炮を広めた堺商人たち/信長・秀吉と堺の関係/武家勢力による博多争奪戦/日本を代表する貿易窓口の盛衰/伊勢神宮の外港から太平洋海運の重要拠点へ「伊勢大湊」/角屋と北条・徳川家のつながり/そう単純ではない「楽市・楽座」/復興策・特権排除・治安維持/軍事戦略としての「楽市」/有名な織田信長「楽市・楽座」の実態/豊臣秀吉による「楽座」の完成/第3章 新興商人vs.特権商人──利権だらけの中世/「特権商人」対「新興商人」──新旧商人の競合/四府駕輿丁座の形成/巨大な特権商人集団の誕生/米の権益を独占した駕輿丁座/米商人への統制/四府駕輿丁座の弱体化/既得権益を揺るがす新興商人集団/利権の張り巡らされた中世/偽文書による紛争決着/偽文書が通ったのはなぜか?/相互不干渉と先例主義/今度は通行権を争う/商売は実績が物を言う/意外な判決/保内商人の戦いは続く/枝村商人の反論/保内商人の再反論/保内商人の苦しい主張/証拠文書か実効支配か/六角氏による意外すぎる判決/斎藤道三の台頭/判決には裏がある!/癒着の決定的証拠か/戦国時代に賄賂は当たり前/木綿運送をめぐるさらなるトラブル/第4章 御用商人たちの暗躍──商人的活動を担った大名家臣/石見銀は誰が運んだのか?/「銀山屋敷」と尼子氏の御用商人/毛利氏商人的家臣/交通の要衝「赤間関」の支配/返礼使として来日した宋希璟/瀬戸内海の水先案内人「東西の海賊」/宣教師ルイス・フロイスが遭遇した海賊/大名に仕えた因島村上氏/公権力から距離を置いた能島村上氏/大内氏がこだわった瀬戸内海/漂流物は誰の物か?/戦国大名と癒着した商人/キーワードは「商人司」/織田信長の商人司「伊藤宗十郎」/今川氏の商人頭「友野氏」/中央集権体制の消滅/伊勢神宮の布教活動/遍歴する修験者と商人/第5章 大名たちの経営戦略──「資源大国」日本/軍事力を維持するために必要なもの/衣服をめぐる経済学/苧麻を独占した「苧座」──越後長尾氏/特権にしがみつく手管/滞った特権収入/そして特権は別の手に移ってゆく/実は資源が豊富だった戦国時代/武田信玄の金山開発/上杉謙信の金山開発/世界的規模を誇った石見銀山/銀山をめぐる戦い/誰が銀山を支配したのか?/戦国時代の城下町/越前朝倉氏の城下町「一乗谷」/地方都市には珍しく医師が住んでいた/朝倉氏による商業の統制/北海道の物流拠点「勝山館」/アイヌと和人の交易/大分土着守護の城郭都市「大友氏館」/南蛮貿易とキリスト教/権力は秤の規格を決める/硫黄・火薬・鉄炮/第6章 世界史の中の戦国時代──貿易を担った商人たち/戦国時代はグローバル化の時代だった/石見銀山で世界に参入/多国籍化する東アジア/「倭寇的状況」──治安の悪化と貿易/倭寇討伐と日本への渡航禁止/堺商人が主導した日明貿易/細川と大内、遣明船同士の武力衝突/博多と堺、遣明船派遣合戦/貿易の中心を担った堺商人「日比屋了珪」/謎に満ちた経歴/南蛮貿易=東南アジアを介した貿易/今井宗久と堺の貿易/京都の名商人「角倉吉田氏」/角倉了以の南蛮貿易/豊臣政権の貿易統制/エピローグ──新旧の秩序がせめぎ合った戦国時代/秩序と自由のせめぎ合い/自由から鎖国へ/あとがき/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

119
戦国時代とは既得権益者と新興勢力の利権獲得を巡る戦いの歴史だった。足利将軍家の衰退に乗じて武士や公家や宗教が好き勝手をし始めると、商人も権力と結びつくだけでなく金融サービスなど新たなビジネスを創造するなど知恵を絞った。同時期に中国大陸も明朝が衰退して倭寇が活発化し、西欧諸国とキリスト教を含む海外勢力が参入し、豊富に採掘される銀が重要な輸出品として海外貿易が新たな利権となった。戦争の悲惨さに満ちていたと同時に、資本主義の勃興期にあった日本で無秩序故の自由放任が貫徹された、活気に満ちた時代であったのは確かだ。2025/09/15

よっち

31
幕府、朝廷、大名、寺社、海外勢力、様々なプレイヤーが乱立する時代に、商人たちは何を頼り、生き延びたのか。その乱世を生き延びる戦略を学ぶ1冊。中央権力の衰退により、特権商人と新興商人が激しくぶつかり合う利権構造の縮図。偽文書や賄賂が横行する中、商人たちは権力者に巧みに取り入り、時には海賊や宗教勢力とも手を組みながら生き残りを模索していて、織田信長や秀吉の楽市・楽座も、理想的な自由市場というよりは、戦略的な利権操作の一環だったようで、金銀などの鉱産資源を巡る争いや世界貿易への参入などなかなか興味深かったです。2025/09/02

みこ

22
室町から戦国期にかけて商人たちがどのような活動をしていたかについて書かれている。地元の有力者と結びつくことができれば白も黒となる。その有力者が倒されて新しい支配者が来たら直ちに取り入る。こういった世渡り上手なものたちが栄えるのはいつの時代も同じなのだろう。ただそのスタイルが家康による全国統一で揺らいでしまったという考察も面白い。2025/08/27

MUNEKAZ

17
いつの時代も何が一番儲かるかと言えば、公権力に食い込んで特権貰って排他的にビジネスを行うこと。京の権門からその特権を保証されれば安泰だった時代は過ぎ去り、実際に当知行を押さえている新興の戦国大名たちが権利を与える主体になる。代々の相伝された文書に拠る権利を訴える伝統商人と、実際に現地を押さえている新興商人の争いなど、特権を与える側と受ける側の変化が印象的。言ってしまえば利権の付け替えなのだが、確かにそこには既存の秩序が破壊された「自由」があるのかもしれない。エピソードメインの内容で読みやすい一冊。2025/08/06

電羊齋

14
幕府、朝廷、寺社など権門をバックに既得権益を守って商売する商人たち、それに食い込もうとする新興商人たち、古文書を偽造してまで権利を主張する商人たち、楽市楽座を進めながら既存商人の既得権益も保護してキックバックを稼ぐ臨機応変な織田信長、瀬戸内海の海賊たち、戦国大名の御用商人、石見銀山と貿易などなど面白い話題が多い。戦国という既存秩序が動揺し、新興勢力が登場する時代状況の中での商人群像がよく描かれている。2025/08/30

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