エクス・リブリス<br> 眠りの航路

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エクス・リブリス
眠りの航路

  • ISBN:9784560090695

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内容説明

父子二代の記憶へ漕ぎ出す
鮮烈な長篇デビュー作

台湾を代表する作家であり、世界的に注目を集める作家・呉明益の長篇デビュー作の待望の邦訳。のちに『自転車泥棒』や『歩道橋の魔術師』にもつながる原初の物語である。
台北で暮らすフリーライターの「ぼく」は、数十年に一度と言われる竹の開花を見るために陽明山に登るが、その日から睡眠のリズムに異常が起きていることに気づく。睡眠の異常に悩む「ぼく」の意識は、やがて太平洋戦争末期に神奈川県の高座海軍工廠に少年工として十三歳で渡り、日本軍の戦闘機製造に従事した父・三郎の人生を追憶していく。戦後の三郎は、海軍工廠で働いた影響から難聴を患いながらも、台北に建設された中華商場で修理工として寡黙に生活を送っていた。中華商場での思い出やそこでの父の姿を振り返りながら「ぼく」は睡眠の異常の原因を探るために日本へ行くことを決意し、沈黙の下に埋もれた三郎の過去を掘り起こしていく。三郎が暮らした海軍工廠の宿舎には、勤労動員された平岡君(三島由紀夫)もいて、三郎たちにギリシア神話や自作の物語を話して聞かせるなど兄のように慕われていたが、やがて彼らは玉音放送を聴くことになるのだった――。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

アナーキー靴下

88
台湾では『歩道橋の魔術師』や『自転車泥棒』よりも前に刊行された呉明益の最初の長編小説とのこと。訳者あとがきでかなり詳細に解説されており、それ以上説明する言葉が見つからない。比重としては太平洋戦争の記憶を浮かび上がらせる要素が強い。断絶された父の記憶を借りて、物語を書く意味…それは、知る意味、考える意味でもある…そんな風に感じる。竹山道雄の『ビルマの竪琴』が生き残った人のための慰霊碑なら、この本は死者のための、もしくは弁明の機会を持たない他者のための墓標。その墓標は、生きた軌跡そのものへの尽きせぬ想い。2021/10/07

榊原 香織

75
魔術的リアリズム、のこれが原点。 時間軸が章ごとに変わるのでちょっと分かりにくいですね。詰め込み過ぎかな。 三島由紀夫まで出てくるし(平岡君)  中国語、台湾語、原住民語、など、複雑な台湾文学の言語状況。 訳、工夫されてると思います。特に、訳者の身についてる瀬戸内海方言を使ったところが(後書き読むまでどこの方言か分からなかった)2021/11/12

藤月はな(灯れ松明の火)

51
戦中の日本と台湾の関係を三重の語りによって浮き彫りにしていく。「私」は突如、夢の中で若き父の記憶を観るようになる。それは記憶されないが、次第に現実と夢の境目が曖昧になる。夢の中では「私」の父、三郎が少年工として日本で過ごしていた・・・。「私」は三郎の過去と同化しつつも覚えていないために自覚するに至らない。それは国の意向で友好国の戦争に従事しながらもアイデンティティが日本へと帰順しなかった台湾人の立場をも暗喩するかのよう。だからこそ、平岡君=三島由紀夫氏の言葉は疎外される者達を置き去りにする自己中さがある。2022/06/29

小太郎

35
呉明益さんは「歩道橋の魔術師」「自転車泥棒」がとても素晴らしかったので長編デビュー作のこの作品を読んでみました。視点が三つ(私と過去の自分、そして父三郎)で書かれていますがそんなに詠み辛くはありません。重層的に語られる台湾と日本の関係。そして自分の内面に睡眠をキーワードにして踏み込んでいく過程が語られています。特に三郎の日本で三島由紀夫と出会うところなどはわくわくしました。仏教を含めかなり衒学的な展開などこれが後の「歩道橋・・」に繋がってい行くのだと感じました。★3.52024/12/21

ykshzk(虎猫図案房)

22
「複眼人」で気に入って以降の2冊目。読み終えたものの、多分私はほとんど読みこなせていない。広すぎて深すぎて。途中で登場する「平岡君」という日本人が三島由紀夫であることにも気付けないでいた。台湾にルーツはあるが、父親が日本で少年工として働いていた経歴を持つ著者の描き出す日本は、多分恐ろしく的を得ているのだと思う。様々な視点からの語りも興味深かった。人間である主人公はもちろん、カメや菩薩など。菩薩に祈りを捧げる人たちの姿について書く人は数多いても、祈りを捧げられた菩薩側の視点を書く人は多く無いのではないか。 2021/11/05

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