内容説明
戦死やあわれ…遠い国でひょんと死ぬるや….詩「骨のうたう」で,戦後を生きる多くの人の心を捉えた竹内浩三.23歳で戦死した彼は,映画監督を志し,友らとにぎやかに金を使い,失恋に滝つ瀬のごとく涙を流す,弱虫で淋しがりやの青年だった.子供の心のままに,素朴さとユーモアで青春を綴っていた彼は,軍隊でも手紙・日記を書き続けることで辛うじて呼吸した.その言葉を1冊に凝縮した新編集版.
目次
骨のうたう
一 ふるさとの風や こいびとの眼や
三ツ星さん/金がきたら/五月のように/麦/あきらめろと云うが/海/大正文化概論/冬に死す/雨/トスカニニのエロイカ/チャイコフスキイのトリオ/メンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルト/モオツアルトのシンホニイ四〇番/鈍走記/口業/泥葬/宇治橋/愚の旗/よく生きてきたと思う
二 戦死やあわれ 兵隊の死ぬるやあわれ
ぼくもいくさに征くのだけれど/わかれ/蝶/曇り空/詩をやめはしない/兵営の桜/雲/演習一/演習二/行軍一/行軍二/望郷/夜通し風がふいていた/南からの種子/白い雲/骨のうたう(原型)/日本が見えない/うたうたいは
三 国のため 大君のため 死んでしまうや――筑波日記(抄)
筑波日記 一 冬から春へ(1944年1月1日―4月28日)
筑波日記 二 みどりの季節(1944年4月29日―7月27日)
四 ぼくは,芸術の子です――短篇小説
雷と火事
私の景色
勲章
作品7番
伝説の伝説
ソナタの形式による落語
花火
ハガキ小説二編
竹内浩三略年譜
作品の出典について
編者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
びっぐすとん
16
【私的夏季課題図書】8月ということでもう1つ戦争に関するものを。「戦死やあわれ」「僕もいくさに征くのだけれど」は何かで目にしたことがある。多くの若い人達が戦場へと送りこまれ命を失った。どれだけ無念だったか。夢があった、恋人があった、何者かになれる可能性があったのに。彼の作品は彼の心情だけでなく、歌や詩、手記を残さなかった数多の若者の声でもある。戦後78年、私は戦争に行った祖父から話を聞けたが、戦争経験者が減る中、戦争の悲惨さについて若い人が想像出来る力を養う教育、機会が必要だと思う。2023/08/16
ゴロチビ
2
(読んだのは図書館の閉架にあった新評論という会社の版。一番近そうな岩波の本の場所を借りる。) 竹内浩三の作品そのものを読みたいと思って。多くの手紙や筑波日記、創作などが読めて良かった。兵隊になってもなおその価値観に馴染まずどこか高みから俯瞰しているようなコーゾーさん。所謂お坊ちゃんで教養もあり芸術を愛する人だから?偶々今の朝ドラが描くやなせさんの軍隊での姿に重なるのだった。戦争が終わったら教師にでもなろうかという呟きや、50歳まで生きて女房はやり手で世間的に名声を博するとの占いの話には胸がキュッとなった。2025/06/17
とんこ
1
THE BOOMの宮沢さんが、僕が書きそうな詩だ、と言ったのをどこかで読んだよーな。 銭湯へゆく 麦畑をとおる オムレツ形の月 大きな暈をきて ひとりぼっち 確かに歌詞になりそうな、そう思うと 遠い過去の詩人でなく今時のミュージシャンみたいな若い子が戦争に行って死んでしまう、そうゆう事だったんだと思った 2021/03/21
青木
1
当方30代、大変親近感をもって著者の詩の世界に没入していきました。学生時代に高円寺、中野辺りをぶらぶらしながらも、創作の種火を滾らせる彼の日常が、なんとも愛らしい。 個人的には、入隊してから日に日に筆の濁りが感じられた。本人もそこは自覚していたようで、文中で焦燥や憤りを吐露している。その構図はまさに悲劇の断章。ただ、文中で綴られるのは筑波のありのままの自然と、彼の情緒に収納されたクラシックの名曲が彩る、我々が想起する軍隊生活とは違う、牧歌的にさえ見える日常。そんな新鮮な体験が出来る面白い作品です。2021/02/14
tecchan
1
23歳でフィリピンの戦場に斃れた竹内浩三の詩と日記を所収している。弱虫でさびしがりやで、ユーモアのある、特に戦争に反対する訳でもない、当時の普通の青年の日常から生み出される彼の詩が心を打つのはなぜだろうか。戦死やあわれ、兵隊の死ぬるやあわれ、遠い他国で ひょんと死ぬるや・・・2017/02/19
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