内容説明
現憲法制定過程で何が起きたか.第九条制定の背景にはいかなる事情が存在していたか.「平和国家」構想の基点はどこにあったか.GHQ側,日本側の動向を徹底的に解明して定評ある必読書が,新資料に基づく知見によって,さらに充実.「憲法改正」問題が課題になるなか,戦後の平和主義の原点を再照射する論点も明確にした改訂版.
目次
はじめに
I 「玉砕」から「平和国家」へ
II 最初の憲法改正案
III 民権思想の復権
IV 明治憲法の評価をめぐって
V GHQ案の基本設計
VI GHQ案――「戦争の放棄」の深層
VII GHQ案の天皇・人権・地方自治条項
VIII 第二の「敗戦」
IX 日本化への苦闘
X 草案要綱の発表へ
XI 東京帝国大学「憲法研究委員会」の役割
XII 米国政府対マッカーサー
XIII 帝国議会での修正
XIV 「芦田修正」の残映
XV 「押しつけ」が残したもの
終章 みじかい春から七〇年
注
あとがき――増補改訂にあたって
憲法制定年表
キーワード
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolflat
16
最近、憲法9条は幣原の発案だという話題が賑わっていたが、やはり本書によると、幣原でなくマッカーサー=GHQの発案らしい。時系列で検証してみると、理屈的に幣原発案でないことがわかる。仮に幣原の発案であり、GHQ案が発せられる以前にマッカーサーに進言していたとすれば、GHQ案で「戦争の放棄」が示された時、幣原は首相として閣議で真っ先にGHQ案に賛成したであろう。或いはGHQ案を基礎にした政府案が閣議にかけられ、議会に上程された際に、9条に「戦争の放棄」はあるが肝心な「平和」が書かれていないと言ったに違いない。2017/11/14
かんがく
14
現在の形の憲法がどのように出来たのか、近衛文麿、松本烝治(自信家)、マッカーサー、鈴木安蔵、高野岩三郎、芦田均、幣原喜重郎、昭和天皇など憲法制定に携わった人々に関する資料を丁寧に読み込みながら明らかにしていく。戦争の「廃止」から「放棄」へ。「至高」から「主権」へ。「人民」から「国民」へ。文言と解釈の変化がよくわかる。「押し付け」論の分析。2019/07/02
佐藤一臣
8
議事録や証言をふんだんに使った日本国憲法草案作成一代記。数人で改正をしようとする日本人と専門家チームを作って組織的にやろうとするGHQとの温度差。極東委員会から天皇や日本国の主権を守ろうとするマッカーサーの視点。戦争の廃止か放棄か?冷戦の為の沖縄犠牲。自国戦争は否定せず日本だけは否定する国際社会。一院制で良かった?生存権はドイツ憲法がカッコイイから入れた?義務教育の延長は青年学校教員の尽力。吉田首相の自衛権否定答弁。芦田の自衛権そもそも肯定。都合悪い議事録削除思想。労働の義務を追加した理由が欲しかったな。2021/11/28
さとうしん
8
旧版に続いて再読して強く印象づけられたのは、「頭の良さ」を誇りながら頑迷さゆえに無様に敗北した松本蒸治、粛々とGHQ案の「日本化」を図った佐藤達夫、誰よりも日本の人権状況について問題意識を持っていた「素人」のベアテ・シロタ、「芦田修正」の解釈をめぐって都合良く「自衛戦争合憲論はワシが育てた」と掌を返す芦田均など、「憲法改正」に関わった人間の動きや個性が生き生きと描かれていることである。著者の本意とは異なるだろうが、本書を下敷きにして憲法誕生の映画やドラマを作ると面白い作品になるのではないかと思う。2017/05/04
千住林太郎
3
日本国憲法はどのように誕生したのか。本書は豊富な文献をひもとき、成立過程を明らかにしている。日本国憲法はGHQと日本政府、極東委員会の政治力学、そして日本政府によるGHQ案の修正と帝国議会での議論によって形作られた。日本国憲法を、そして戦後の日本をどうすべきかという議論の応酬はスリリングで実に面白い。しかし、その議論が沖縄とを置き去りにして進められたことは無念である。 日本国憲法制定の決定版といえる本であろう。2022/04/29
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