アウター・ダーク 外の闇

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アウター・ダーク 外の闇

  • ISBN:9784861108952

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内容説明

近親相姦により赤子をもうけた兄と妹が、彷徨を重ね、行きついた先に見たものとは? アメリカ南部で極度の貧困にあえぎながら生きる人々の暗澹たる世界を寓意的に描く。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ヘラジカ

47
先に邦訳刊行された第一作は荒々しく、あまりにもフォークナーに傾倒しすぎているように見えたが、第二作のこの作品は確固たる独自の神話世界が築かれ始めた原初のマッカーシーを味わうことが出来る。既に後の作品を読んでいる読者ならあらゆる萌芽が目に留まり興奮すること請け合いだ。これから真剣にマッカーシー文学を読み込もうとする人にも、この最新の邦訳書をお勧めしたい。決して簡単な読書とは言えないが、読んでいて”しこり”になる部分は恐らく全て詳細な解説がほぐしてくれるはず。遺作刊行を前にして邦訳が進んでいることが喜ばしい。2024/01/02

田中

31
マッカーシーがその複雑な世界観を多義的に描いた1968年の2作目である。心理描写がなく、人間と自然が同定する文体は既に完成されている。たった一人で「道」を彷徨い続ける姿に、絶望と無情が渦巻く。哀願者のような妹は誰かとのであいが恩寵であり、兄は異質な強権者から罰に処される受難者だ。普遍的な宗教や多様なイデオロギーではこの「世界」は絶対に把握しきれない。なぜなら、太古から奏でる思想と教義に盲目なのだ。内も外も「暗闇」の中では、尊大者が生かされ冒涜な行為がある。その裏返しの情景をマッカーシーが敷衍する。 2024/02/04

かんやん

25
マッカーシーの長編第二作。外の闇に捨てられた赤子を捜してさすらう若い母親、彼女を追う兄。彼らの姓はホーム。赤子はアダムとイブのように無知な二人の子どもだった…。追跡、逃走、そして殺人。この作家が繰り返して描いてきたことだ。心理描写ではなく、自然描写、人間がその心のうちに抱える闇ではなく、彼らを取り囲み圧倒する原初的な世界、それは人が存在する前からあり、滅びた後にも残るであろう。救いはなく、希望はほんの少しの兆しすら見えない。神が不在の神話のようだ。「怖いです。近くで殺される人がいなくたっていつも怖いです」2025/11/11

くさてる

22
すこしずつマッカーシーを読んでいる。初期作とのことだが、まごうことなきマッカーシーの作で圧倒された。本当にすごい文学は読者の無知を乗り越えて、ページをめくる手をつかんで、その世界に引きずり込んでくれる。いったいなにが書かれているかが分からなくても、とても理解できない展開や好ましいとは言えない情景が続いても、読み進める以外の選択肢が浮かばず、ラストでため息をついた。けど、訳者あとがきが作品の輪郭をとらえる手助けになった。素晴らしい読書体験だった。2024/09/20

ギンテマリン

16
「ザ・ロード」のあとこの作品を読んだので、比較せずにはいられない。望んで産まれたわけではない子供。人肉を食べる人間、信仰から外れた世界観、などなど。そんな事考えていたら、解説で、作者の当時の執筆状況が2作品にそれぞれ似た影響を与えていたようで、納得。しかし、「アウターダーク」は「ザ・ロード」とは違い希望の欠片もない終わり方。そこは、他作品の世界観に近いものを感じた。マッカーシーは聖書やグノーシス主義の書物の知識があると、もっとぐっと物語の奥行きが広がるのかな。でも、それがなくとも楽しめた作品でした。2024/03/19

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