内容説明
空前のバレエブームに沸く戦後。バレエ教室を主宰する波子の夢は、娘の品子をプリマドンナにすることだった。だが、夫は家に生活費を入れてくれず、暮らしは苦しくなっていく。追い詰められる波子の心の支えは、かつて彼女に思いを寄せた男、竹原だった――。終戦後の急速な体制の変化で社会や価値観が激変する時代に、寄る辺ない日本人の精神の揺らぎを、ある家族に仮託して凝縮させた傑作。(解説・池澤夏樹)※三島由紀夫による解説は収録しておりません。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
雪月花
45
『舞姫』と言えば森鴎外だと思っていたが、川端康成も書いていたのか!と図書館で驚き、借りてくる。古いのに新しい感覚。そしてやはり川端康成の女性の心理描写には唸らされる。崩壊しそうでしない歪な家族関係が描かれるが、やがて波子の不貞が家族に露呈し不穏な空気に。読みながら、波子は鳥籠の中の小鳥で、その鳥籠に蛇のような矢木が絡まっている図が頭から離れず、子どもたちは籠から飛び立っていくであろうが、波子は竹原の元に飛んではいかないのだろう、と予感させて終わる。三島由紀夫の解説が良かった。2025/03/08
Die-Go
37
20数年振りに再読。全く初読のような感じ。ねじれた関係の夫婦、その娘と息子を軸に物語は進む。奇妙な実感を味わわせる。さすがに文脈は川端康成、絶妙である。★★★★☆2024/12/29
特盛
30
評価3.9/5。裕福だった家族が戦後数年でバラバラになっていく。元バレリーナの妻の不倫を軸に、教養高いが自分勝手で不気味な夫、自立しつつある二人の子供達の関係が描かれる。家族が壊れる様がいかに不可逆であるか。そして状況の当事者たちには壊れることは予感とともに展望も良く見えない。ごまかしごまかしやってきた家族間の対決がクライマックスだ。近い人ほど憎み合うと遠い。純文学っぽっく結末に様々な含みを持たせているが、暗い小説だった。解説が三島由紀夫と池澤夏樹という豪華で、批評内容もまた秀逸で読み応えあり2024/11/06
ピンガペンギン
26
主人公は40歳を過ぎた資産家階級(戦争で凋落)バレエ教師の波子で品子と高男という子供がいる。結婚生活は冷えていて、20年来の恋人の竹原と時々会うのが生きがいの一つ。夫の八木は給料を妻に渡したことがない。八木は「魔界から妻子を見ている」と娘に描写される。「お父さまはお母さまの魂を食べて生きていらしたのよ」という言葉はショッキングだった。なぜ離婚していないかという夫婦だが、発表は昭和25年であり時代の制約か。波子の描写は美しく読ませる文章だった。「仏界、入り易く、魔界、入り難し」ということばは「舞姫」で→2026/07/12
まさ
23
1951年(昭和29年)の作品だから現代と趣きも異なるのだろうけど、当時の人たちは欲に溢れた日々に身をおいてたのかと想像した。美しく穢れのないものと俗な世界が表裏一体であるかのよう。川端作品の『みづうみ』も思い浮かべた。それが『眠れる美女』や『片腕』のようにさらに際立った美へとつながっていく、その入口を感じた。2025/02/14
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