内容説明
山奥で、顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた死体が発見された。事件報道後、警察署に小学生が訪れ、死体は「自分のお父さんかもしれない」と言う。彼の父親は十年前に失踪し、失踪宣告を受けていた。無関係に見えた出来事が絡み合い、現在と過去を飲み込んで、事件は思いがけない方向へ膨らみ始める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
540
このミス国内部門1位。設定や読み口から、『容疑者Xの献身』を連想する読者は私だけではないはずだ。顔のない死体meet浪花節の組み合わせはヒットしやすい説あるのかもしれない。警察小説の皮を被っており、なかなか巧みな擬態ではあるが、日野の発想の飛躍の仕方などは、名探偵物のそれで、ポンポンと勘を的中させていく。無関係にみえた事柄が、意外なところから線になってつながり出す興奮は存分に楽しめるが、表裏一体でご都合主義に見えるつなげ方もかなり多い。警察小説のフィールドで本格派なミステリ題材を扱ったからの成功ではある。2025/12/21
パトラッシュ
310
虫オタク探偵が主役の短編コージーミステリを書いてきた作家が、突然に長編警察小説へ挑んだ。しかも残酷な殺され方をした死体を巡り、次々に重なる謎を地味な刑事が追跡する本格物なのだから。大丈夫かと思いながら読んだが、今年のミステリランキングで上位を狙える出来栄えだった。社会の矛盾や人の業で追い詰められて起きた犯罪を丁寧に解きほぐしていく展開が鮮やかだが、張り巡らされた伏線が回収されて予想外の真相が明らかになる結末はカタルシスに満ちている。しかも主人公の個人的事情が解決に結びつく、無駄のない仕上がりが見事だった。2025/09/25
starbro
305
櫻田 智也、2作目です。読メの評判が良いので、期待して読みました。期待した割には、事件も地味で、可もなく不可もなしと言った感じでした。年末の各種ミステリBEST10に、ランクインするでしょうか❓ https://www.shinchosha.co.jp/book/356411/2025/10/22
楽
189
25年8月。「ソーセージを巻いた食パン」とは食パンを巻いたソーセージのことか。さて、著者とはご縁がありこれまでの短篇3冊も発刊の都度お贈りいただいていたのですが、今回は発売直後の在庫が不足気味で著者購入を遠慮した、とのことでしばらくして届いたのは二刷。発刊から十日後にはニ刷とは、新聞広告や書評でもお見かけしており、売れっ子作家になりつつあるのだなあと感激。サイン入りでいただいた初の長篇には「帯は大ゲサですがいつもの感じでやってます」とのことで(書いてもいいよね?)、このあたりは一昔前から変わらないなと(続2025/10/12
yuuguren
178
初読みの作家さん。表題や帯の様子から猟奇的な作風なのかとも思ったが、本格警察ミステリーだった。日野の家族への思いやりや課長が敬語で話すところなど、いかにも令和の警察を表しているが、日野と入江、日野と羽幌とのやり取りはやはりこてこての警察野郎たちだった。それにしても顔を叩き潰すとか歯を全部抜くとか両手を切り落とすとか、確かに身元を隠すためのものではあるのだが、そこまで強い動機とは思えないのだが。。。2025/10/27




