内容説明
「将来の夢」を思い出せない全ての大人達へ
「才能を持った人間なんて、実はたくさんいる。でも、天才は違う。天才は、才能を見つけた連中が、一方的にそう名づけるんだ」
デビュー10年。爆発的に売れることはないけれど、きちんと締め切りを守り、編集者に無理難題を押し付けずに着実に仕事をこなす作家・星原イチタカ。一方、同期デビューの釘宮志津馬は偏屈で横暴であることを自覚しながらも、大人気作家であることから周囲に丁重に扱われることに対し憤りを感じている。イチタカの才能を軽んじる向きもある中、釘宮だけが彼の「天才」性を”観測”していた。
藤井聡太七冠の記録を塗り替え、史上最年少でプロ入りした中学生棋士、タピオカミルクティーの味もマカロンの味も知らない、かつての「氷上の妖精」、気がつかぬままに抜群の歌声を持ち、オーディションを駆け上がる天才中学生……。
描かれるのは5人の天才たち。彼らと、彼らを観測し続けた人々の姿が紡がれる連作短編集。
【目次】
星の盤側
妖精の引き際
エスペランサの子供たち
カケルの蹄音
星原の観測者
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hiace9000
120
デビュー10周年の集大成にふさわしい、紛れなき額賀ベスト作。スポーツ、音楽、将棋…夢と現実、栄光と挫折を描く四短編に、書き下ろしの一編を加え連作に仕立てた〈ビター系青春小説〉。天才というスターを「星」に譬えたと察する書名、天賦の才を持った彼ら彼女らを意外な立場から見守る(観測する)人々の視点で捉え直し、天才たちの実像を浮き彫りにした群像劇、二つの鮮やかなマッチに成功している。それはこれまで数々の額賀作品の下地があったればこそ成し得た快挙かと。人々の思いを通して観えた夢は、読み手の胸に深く沁み、震わせる。2025/07/27
おしゃべりメガネ
96
ちょっと久しぶり感のある額賀さん作品。ある1人のカメラマンを軸に展開される連作集。基本、スポーツと絡めた話ですが、相変わらず作者さん、しっかりと取材してらっしゃるからか改めて勉強になるコトばかりでした。個人的にはやっぱり競走馬を引退した馬の話が良かったかな。主人公の男の子がケガでスポーツから一線をひき、その流れで再起を促される構成はベタかもしれませんが、やはり胸がアツくなりますね。ラストの小説家の話はなんとも微妙でした。せっかくキモチスッキリと読めていた流れになんともいえないモヤモヤ感が残された気が。2025/08/17
ゆみねこ
74
スポーツカメラマンの多々良が天才棋士のデビュー戦を撮影する。その対戦相手もかって中学生棋士としてデビューした人。そこから多々良目線のストーリーがつながるのかと思いきや、ゆるくつながる連作短編集。引退を決めた元金メダリストのフィギュアスケーター、ボランティアで無償塾の講師をする女性が見出した才能、怪我で挫折した陸上選手と引退した競走馬との出会い。共にデビューした2人の作家、性格に難がある今をときめく売れっ子と中途半端な中堅作家。5編それぞれに感じるところがあり、好きな1冊。2025/08/15
美紀ちゃん
60
連作短編集。 カメラマン多々良智司(さとし)。 スポーツの「ここだ」という一瞬を切り取ることができるカメラマン。 この人もある意味天才だと思った。 才能を持つ人って、意外にたくさんいるのかもしれない。 スポーツ選手や、作家、将棋の棋士、歌手、 そのそばにいる人は、その天才をどう見ているのか? 共感できる部分もあり、良かった。 でも天才って、努力を積み重ねることができる人のことだと思うけどね。2025/08/14
雪
52
さまざまなジャンルの「天才」をそばで見つめてきた人たちに焦点を当てた連作短編集。どの道も一握りの天才の周りには、無数のそこに届かなかった人々がいる。絶妙な距離感のカメラマン多々良の存在が良い。『妖精の引き際』『星原の観測者』が特に印象に残った。2025/08/10
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