内容説明
遺された謎が解けたとき、涙があふれだす。
巣鴨の路地裏にたたずむ、遺影専門の写真館《雨利写真館》。先月急逝した祖母が撮影されたときの話を聞くために、黒子ハナは写真館を訪れる。奇妙な遺言状を作っていた祖母の真意を知るための、手がかりを求めてのことだった。カメラマンの雨利や経理の夢子の協力で、ハナは祖母の最期の望みに気づく――。
写真館で働き始めたハナはその後、心にわだかまりを抱えた人たちと出合う。不審な転落事故や、意味不明なメモの残る妊婦の写真。様々な謎と向き合いながら、ハナも自分の人生を見つめ直す。日本推理作家協会賞受賞の名手が紡ぐ、希望と再生のミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カブ
44
舞台は遺影専門の写真館「雨利写真館」。その時のために遺影を撮影しておくって大切。急に亡くなった祖母の撮影の時の話を聞いて遺言状の真意を探ろうとする、黒子ハナ。カメラマンなどの話を聞いて遺書の本当の意味にたどり着く所がよかった。続きがあるなら持っと読みたい。2025/07/08
akiᵕ̈
34
遺影専門の《雨利写真館》を巡る、家族の絆を描く連作短編。黒子ハナのクイズ好きの祖母が亡くなり、長女であるハナの母親にだけ遺産を残していない!?という所から、ここの写真館を訪ね、その真相の意味を見つける所から始まる今作。ほのかなミステリを含み、家族を思うが故のすれ違いに気づき、モヤモヤしていた心に光が差していく。ハナも関わっていく中で、父親との事でわだかまっていた心と向き合い自分なりの整理がつく。終活の1つとして遺影を選んで置くことも大切だし、こうして故人となる人との思い出を噛みしめる時間にも尊さを感じる。2025/07/11
mayu
26
巣鴨の遺影として使う事を想定した生前写真を撮影するのを専門にしている写真館を舞台にしたミステリ短編集。「十二年目の遺影」が一番好きだった。写真館の名前にある雨利さんが良いキャラなんだけど目立たなくて残念。エピローグは良かったけど、ちょっと卑屈な主人公の事が好きになれなかったなぁ。芦沢さんの作品は結構読んでいる印象だけど読み始めからキャラ立ちするような描き方とか主人公の感じとか、少し違和感あるなぁと感じていたらデビュー2年目の作品を改稿したものだと知って納得だった。2025/07/17
エドワード
23
あとがきで遺影専門の写真家が実際にいることを知る。巣鴨にある遺影専門の雨利写真館が舞台の三つのミステリー。その一:スタイリストの黒子の祖母はクイズを出すのが大好き。遺産相続までクイズとは?その二:黒子は写真館のヘアメイクとして雇われる。息子は母親の転落死をなぜ放置したのか?祖父、父、息子のこじれた関係が修復される。その三:写真館を取材するテレビ局が見つけたある遺影、妊婦と夫らしい写真の謎。無愛想なカメラマン・雨利、助手の軽い道頓堀、機転のきくコーディネイター・夢子、チームワーク満点だ。活字が大きいよ。2025/08/15
よっち
21
巣鴨の路地裏にたたずむ、遺影専門の写真館《雨利写真館》。先月急逝した祖母が撮影された時の話を聞くために、黒子ハナは写真館を訪れる連作ミステリ。既婚者に騙されて職も失ってしまったハナが、訪れた写真館で気付いた祖母の遺言書の真相。それをきっかけに写真館で働き始めた彼女が遭遇する、祖父・父・息子三代を巡る不審な転落事故の真相や、意味不明なメモの残る妊婦の写真の謎。謎解きの鍵を握るのは存在感のある経理の夢子さんではなく、店主でカメラマンの無愛想な雨利で、その辺のアンバランスさに少しだけ初期作品っぽさを感じました。2025/08/14