内容説明
「ジェンダーをまとった文化的影響の層の下には,本質的なジェンダーではなく,あいまいで,多重に構築された,自分の性との非常に葛藤に満ちた関係がある」(ディーメン,本書より)
本書は、精神分析がいわゆるジェンダーをどう捉えてきたのかを、大まかに概観してみようとする試みである。ジェンダーや性差は,意識されているか否かにかかわらず,人間の生き方に深く関わっている。
精神分析はともすれば男性中心主義的な思想をもち、古典的なジェンダーロールを規範として押しつけるものという印象を与えているかもしれない。しかし現実には精神分析理論は、フロイト以降もそのジェンダー観を発展させながら現代に至っている。著者は,フロイトから現代へ,今改めて,ジェンダーについての課題を問い直す。
目次
まえがき
第一章 フロイトの精神分析
第二章 ポジティブなものとしての女性性―フロイト男根一元論へのカウンター
第三章 「精神分析的ジェンダー論」の登場
第四章 精神分析におけるジェンダー観の三つの段階
第五章 〈母―子〉、〈男―女〉―切り結ぶ対関係
第六章 「甘美」か「恐怖」か?―女性治療者にとっての性愛的転移
あとがき