内容説明
小原晩、カツセマサヒコ推薦!!
恋ではない。友情ではない。
ふたりの関係の、呼び方を教えて。
学生の頃、彼女とはよく大学の付属植物園で過ごした。花の名前もよく知らないのに。
ある日彼女は、園内の礼拝堂の前で突然、耳鳴りがすると言った。
昨日、眠れなくて、宇宙の動画を見ていた時からずっと耳鳴りがする。
宇宙で鳴っている音を想像してからずっと、と――「植物園にて」
新幹線で出会った女性と偶然にも温泉街で再会した私は、
彼女に導かれて、古びたリゾートマンションの屋上から花火を眺めていた。
30分足らずで終わった花火の後、彼女は先に部屋に行っていると言い残して、
屋上から去ったが――「筏までの距離」
デビュー作で芥川賞候補に挙がった著者が贈る、
書き下ろし2篇を含む、わたしとあなたの8つの物語。
【著者略歴】
水原 涼(みずはら・りょう)
1989年兵庫県生まれ、鳥取県育ち。北海道大学文学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。2011年に「甘露」で第112回文學界新人賞を受賞しデビュー。同作が第145回芥川龍之介賞候補作になる。著書に『蹴爪(ボラン)』、『震える虹彩』(安田和弘との共著)がある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
konoha
35
新鮮でとても良かった。生々しい感情や温度が伝わってきて、それがだんだん心地良くなる。8つの短編で小説家、別れなどのモチーフが繰り返される。恋人との別れを丸めたマスキングテープで表すセンスが良い。退職と離婚を経た男が帰郷して木工旋盤を始める「回して削る」が好き。職人への憧れがあってうらやましいのと、地元の友人や木工旋盤の荒々しい手触りに意外性があった。作者は取り残してきた出会いや思いを細やかに拾い上げる。風景画のように柔らかいのに、自分の過去が抉られる鋭さがある。今後も注目したい。2025/07/30
信兵衛
17
表題作「筏までの距離」に、一番惹きつけられます。 その他、「ロング・スロウ・ディスタンス」「沙貴のこと」が面白く感じられました。2025/07/29
ささやか@ケチャップマン
4
8つの掌編集。本来小説にすらならないであろう些末な出来事を作者の力量で小説にしているのでそこに起伏のついた物語はなく、ただ事実がある。起承転結のハッキリした物語を好むなら勧められないが、むしろ些末な機微を好むのであれば読んでみてもいいと思う。2025/08/13
Hanna
4
初読み作家さん。恋人でなくなり、友達とも違う微妙な関係のお話。2025/07/15
ekoeko
2
8篇の淡々とした短編集。 2025/07/23