内容説明
ここにもある袴田事件、免田事件、財田川事件、足利事件の理不尽。
生きるということは、かくも哀しく美しいものか。照らし出される司法の闇、冤罪の虚構、人間の絆。作家の才能に嫉妬する。―堀川惠子(ノンフィクション作家・代表作『教誨師』)
突然、父親を奪われた少女に救いは訪れるのか? 事件の謎は戦前から令和まで引き継がれ、慟哭の結末は我々に生きる意味さえ問いかける、前代未聞かつ究極の「冤罪」ミステリー。世代を超えて社会の歪みと戦い続ける者たちの行き着く先とはいったい何なのか。
時代を超えて受け継がれる法律家の矜持に心が震えた。―五十嵐律人(作家・代表作『法廷遊戯』)
わたしはこれ以上のリーガルミステリを知らない。―染井為人(作家/代表作『正体』)
冤罪と冤罪で翻弄されたものたちが辿る刮目のドラマ。戦中、時局に媚びる社会情勢の中で苦悩する弁護士のギリギリの戦いは、本人が戦場に送られて戦争が終わってからも、正義を信じる弁護士や検事により引き継がれる。彼らが報われる日は来るのか? 社会のひずみを壮大なスケールで活写したリーガル・ミステリーの雄の渾身作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
129
慟哭の「冤罪」大河ミステリーとある。いやはや大門さんに拍手の読書だった。戦前から令和、伊勢山田で起きた殺人事件の犯人として逮捕された一人の死刑囚・谷口喜介と残された娘・波子の人生に関わる弁護士家族や検事たち。冤罪事件を巡り奔走する歳月、突然の死刑執行の驚愕、時代背景や地域社会が絡み再審請求の難しさを感じた。重たい思考を引きずりつつラストの真相には言葉もない。「何故だ!」早くに明らかにされていればと悔しく、あの彼もまた人の子かと憤りと遣る瀬無さが天秤に。今更ながら波子の90年を超える人生に思いを馳せたい。2025/07/26
雪
53
圧巻の一言。戦時中に起きたある冤罪事件を巡り、一人の人間の無罪を勝ち取るために戦後~令和の現代までを闘った人々を描く長編。時代背景と各関係機関のさまざまな思惑の上に認められる再審請求の困難さとは、どれだけ果てしなく高い壁であることか。時空を飛び越えて、八十年の月日を波子たちと生き抜いたような余韻に浸った。2025/07/23
fukui42
12
圧巻の一気読み。次のページをめくるのがもどかしく、だけどドキドキ。何度も「えええ!」の続出。冤罪事件を端緒に進む話。関係者が襷をつなぐように、真相の探究を進める。真犯人を見つければ、無実を証明できるのか?。戦前から令和までの時間軸もお見事。あーー面白かった!!。約500ページも、全く感じさせないってすごい。2025/07/20
TI
9
大河小説だね。戦争中から令和までかけての話。戦争中に犯人とされた人(冤罪)の娘とそれに関わった人達の話。読み応えはあり。2025/07/27
ハルめめ
8
昭和18年に起きた一家三人殺人事件。そしてそれは冤罪だった。戦中から令和までの時代の中でそれぞれに冤罪を晴らそうとした人たちが奔走する。志半ば無念のもとその生涯を閉じていく中でその使命は引き継がれていく。「検察は被害者と共にある」といった言葉が出てくるけれど、その被害者というのは冤罪に巻き込まれた人たちは決して入らない。警察や検事の中には一生悔いを残しながら生きている人もいるかもしれないが、国家の中では無力。80年余りにも及ぶ再審請求は意外な形で終わる。面白かった。2025/08/03