内容説明
ここにもある袴田事件、免田事件、財田川事件、足利事件の理不尽。
生きるということは、かくも哀しく美しいものか。照らし出される司法の闇、冤罪の虚構、人間の絆。作家の才能に嫉妬する。―堀川惠子(ノンフィクション作家・代表作『教誨師』)
突然、父親を奪われた少女に救いは訪れるのか? 事件の謎は戦前から令和まで引き継がれ、慟哭の結末は我々に生きる意味さえ問いかける、前代未聞かつ究極の「冤罪」ミステリー。世代を超えて社会の歪みと戦い続ける者たちの行き着く先とはいったい何なのか。
時代を超えて受け継がれる法律家の矜持に心が震えた。―五十嵐律人(作家・代表作『法廷遊戯』)
わたしはこれ以上のリーガルミステリを知らない。―染井為人(作家/代表作『正体』)
冤罪と冤罪で翻弄されたものたちが辿る刮目のドラマ。戦中、時局に媚びる社会情勢の中で苦悩する弁護士のギリギリの戦いは、本人が戦場に送られて戦争が終わってからも、正義を信じる弁護士や検事により引き継がれる。彼らが報われる日は来るのか? 社会のひずみを壮大なスケールで活写したリーガル・ミステリーの雄の渾身作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
133
慟哭の「冤罪」大河ミステリーとある。いやはや大門さんに拍手の読書だった。戦前から令和、伊勢山田で起きた殺人事件の犯人として逮捕された一人の死刑囚・谷口喜介と残された娘・波子の人生に関わる弁護士家族や検事たち。冤罪事件を巡り奔走する歳月、突然の死刑執行の驚愕、時代背景や地域社会が絡み再審請求の難しさを感じた。重たい思考を引きずりつつラストの真相には言葉もない。「何故だ!」早くに明らかにされていればと悔しく、あの彼もまた人の子かと憤りと遣る瀬無さが天秤に。今更ながら波子の90年を超える人生に思いを馳せたい。2025/07/26
シャコタンブルー
61
袴田事件を髣髴とさせる冤罪に感情が激しく揺さぶられた。あやふやな目撃情報や捏造、隠蔽された証拠で無実の人間が死刑囚になってしまう恐怖。検察の正義とは何だろう、そこは硬直した権力の横暴が蔓延る無法地帯のようだ。無実を信じる弁護士や検察官の戦いが何十年も続いていく。一人が倒れてもその熱い思いを次の世代が引継ぎバトンは途切れない。冤罪被害者だけでなく冤罪者とその家族にも焦点をあて、誰も幸せになれない現実が浮かび上がてくる。隠された真犯人と恐るべき真実が露わになる驚愕の展開は圧巻としか言いようがない傑作だ。2025/08/04
雪
56
圧巻の一言。戦時中に起きたある冤罪事件を巡り、一人の人間の無罪を勝ち取るために戦後~令和の現代までを闘った人々を描く長編。時代背景と各関係機関のさまざまな思惑の上に認められる再審請求の困難さとは、どれだけ果てしなく高い壁であることか。時空を飛び越えて、八十年の月日を波子たちと生き抜いたような余韻に浸った。2025/07/23
konoha
53
法廷もの、戦中〜戦後の大河小説どちらも好きなので、とても面白かった。波子の父親は強盗殺人罪で死刑判決を受け、弁護士の吾妻は無実を証明しようと奔走する。気が強く父親思いの少女、波子と吾妻の出会いの場面が鮮やか。3人の視点で語られ、長い年月で形は変わっても意志を受け継いでいく様が圧巻。吾妻と本郷のパートが好き。戦時下で証拠が消失し冤罪の証明は困難を極めるが、不思議と明るいエネルギーに満ちていて最後まで諦めない登場人物に寄り添っていられた。終盤だけしっくり来ないが、あとは完璧。2025/08/10
薦渕雅春
22
500ページほどの大作。伊勢神宮のある町で起きた事件がテーマ。20年に1度の遷宮が行われていた昭和18年から話が完結するまで80年ほどの歳月、長きにわたる話。最初はなかなか読み進まなかったが終盤は面白くなった。冤罪で捕まってしまい、それを晴らそうと皆が動いているのだがなんと死刑が行われてしまった。それにも関わらず、何人もの、何代にもわたる弁護士たちが取り組み続ける。冤罪を起こしてはならないのはもちろんだが、裁判所の判断、度々の検察側の抗告、数々の矛盾を挙げながら既に亡くなった人の名誉を回復しようとする話。2025/08/17
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