岩波新書<br> ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる

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岩波新書
ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる

  • 著者名:小川公代【著】
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • 岩波書店(2025/06発売)
  • ポイント 10pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004320715

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内容説明

強者が押しつける「正しさ」と暴力や分断がはびこる現代社会.そこで置き去りにされているのは,尊厳を踏みにじられた人々が紡ぐ〈小さな物語〉――恐ろしい怪物の物語として知られる『フランケンシュタイン』を,10のテーマを通して多様な作品群と縫い合わせ,読む者をケアの本質へと誘う.想像力を解き放つ文学論.

目次

はじめに
1 戦 争
『進撃の巨人』『三ギニー』
1 「壁」を乗り越えて――小さな物語へ
2 アウトサイダーの女性たち
3 『フランケンシュタイン』――生の平等を問う
2 論破と対話
『もうひとつの声で』『バービー』『バタードウーマン』
『バグダードのフランケンシュタイン』
1 関係性を結んで対話する
2 対話と共話
3 ヴィクターがSNSを使えたなら
4 『バグダードのフランケンシュタイン』
3 親ガチャ
『親ガチャの哲学』『色彩を持たない多崎つくると,彼の巡礼の年』『波』
『山上徹也と日本の「失われた30 年 」 』 『SPY×FAMILY』『キン肉マン』
1 共同体幻想を打ち砕く人間の流動性
2 「これからの時間」を生きるために
3 「無敵の人」としてのクリーチャー
4 ジークの反出生主義とアーニャの反・反出生主義
4 マンスプレイニング
『哀れなるものたち』『吸血鬼ドラキュラ』
1 “声”とは何か
2 エドワード・トレローニーの誹謗中傷
3 『哀れなるものたち』と女性たちの声
4 愛と自由について語る
5 レイシズム
『ウォッチメン』「オジマンディアス」
1 レイシズムとは何か
2 『ウォッチメン』は何をケアするか
3 タルサ暴動を語り直す
4 『フランケンシュタイン』におけるレイシズム批判
6 インターセクショナリティ
『カラーパープル』
1 インターセクショナリティとは何か
2 “声”を獲得していく物語
3 『フランケンシュタイン』のインターセクショナリティ
7 愛
『ワンダー・ウーマン』『もう一人,誰かを好きになったとき』
『鬼滅の刃』『偽姉妹』
1 ゼロサム的な恋愛に抗して
2 ポリアモリーとは
3 メアリ・シェリーの愛の実践
8 エコロジー
『優しい語り手』『オーランドー』『センス・オブ・ワンダー』
1 エコロジー運動の黎明期
2 ワーズワスからウルフまで
3 カーソンの『センス・オブ・ワンダー』
9 ケアの倫理
『虎に翼』『ダロウェイ夫人』
1 〈ケアの倫理〉とは何か――『虎に翼』とケア
2 弱者の「声」に耳を澄ませる
3 『フランケンシュタイン』に描かれるケアの倫理
10 アンチ・ヒーロー
『僕のヒーローアカデミア』『外套』
『「性格が悪い」とはどういうことか』『ベル・ジャー』
1 アンチ・ヒーローとは
2 “ギフテッド”の功罪
3 なぜトガヒミコはヴィランになったのか
4 ロマン主義時代の反逆者たち
参考文献一覧
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

139
正しいが弱い者は間違っているが強い者に必ず負ける。人類の歴史は敗北し踏みにじられた弱者の上で強者が書いてきた一方で、名誉も尊厳も失った弱者をケアする数多くの文学が紡がれてきた。醜さ故に周囲全てに拒絶された怪物が主人公の『フランケンシュタイン』を発祥として親ガチャから人種差別、愛にエコロジーに至るまで映画やドラマ、漫画などでの多彩なテーマの底流となっている。ウクライナやガザで今も続く強者の暴虐による支配を目撃する現代人が、政治や思想など大きな物語だけでなく生きづらさに直面し苦しむ弱者に寄り添うべきと訴える。2025/09/11

ネギっ子gen

90
【読書の実践は本の世界では終わらない。文学作品を読み解く力は、現実を組み替える力に変えていける】『フランケンシュタイン』を起点に、弱者を蹂躙する強者の物語に対して、権力を持たない「アウトサイダー」たちの“小さな物語”がいかに軽視されてきたかを、文学や映画を例に挙げ論じた書。巻末に参考文献一覧。<この物語は人の死や死んでいく人で満ちている/それでも、死という表面の下には、生きることへのこだわりや、生きようとする決意がある。/迷いながらも「今、ここ」で困っている人に手を差し出そうとしている人たちがいる>と。⇒2025/08/13

けんとまん1007

55
多様な視点から、「大きな物語」と、それに圧し潰される「小さな物語」を、ケアの2文字をキーワードとして描かれている。そこにあるのは、短絡的な視点・思想と、中長期で地に足のついた視点・思想との対比でもあると思う。とにかく、超短期的に餌をばらまき、多様な面から行き場を無くすような風潮に、どう抗うかを考える。読みながら、自分自身の価値観を鍛え直すような気持ちになる。ケアというのは、全人的なことであり、いろいろな人たち・状況において大切な思想だと思う。2025/12/07

フム

32
図書館本。著者の本は『ケアの倫理とエンパワメント』以来、新刊が出ると読んでいる。本書は雑誌『世界』連載。世界で今起きていることを、ケアの倫理という視点から論じている 「小説の醍醐味とはポリフォニー(多声性)の一つ一つの声に耳を傾けること」文学は何世紀にもわたって、弱く小さな声を言葉にしてきた。力による支配や暴力によって国家の安全や利益を担保しようという考えの元では、マイノリティである小さな声達は踏みにじられてしまう。日常のちょっとした偏見が差別に結びつき、そのアクセルを踏ませてしまうことにも注意が必要だ。2025/10/05

三井剛一

24
沈黙させられてきた人たちの声を、「フランケンシュタイン」を中心に文学・映画・アニメから見つけ出す。最近は、物語の負の側面を語られることが多い。しかし、物語には、人の感情を動かし、共有できる力がある。その力のおかげで、複雑で多様な声が、すっと入ってきた。単一の軸・分類だけを見ては、その人の苦悩は、わからない。個々の複雑で個別具体的な経験をそのまますくいあげる。見過ごされてきた人を知り、想像力・共感力を働かせる。自立を目指すのではなく、関係性・つながりを維持するようにする。ケアし、ケアされる相互関係が必要。2025/12/24

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