内容説明
最愛の夫が他界したあと書き継いだ,亡夫に贈る愛の詩篇.夫婦という極めて私性の強い密室を描き,女性としての息づかいが濃厚にただよう,死後にもつづく永遠の愛.戦後の女性の生き方を読者の知性に訴え続けてきた詩人が,没後にはじめて詳らかにした,純愛に生きるみずからの生(なま)の姿.口絵二丁.(解説=小池昌代)
目次
Ⅰ
五月
その時
夢
四面楚歌
最後の晩餐
お経
道づれ
月の光
栃餅
部分
夢で遊ぶ病
占領
泉
駅
Ⅱ
薰しぐれ
夜の庭
モーツアルト
殺し文句
恋唄
獣めく
一人のひと
二人のコック
町角
誤算
ひとり暮し
手
急がなくては
レンコート
梅酒
橇
Ⅲ
なれる
電報
(存在)
(パンツ一枚で)
試すなかれ
椅子
古歌
湯檜曾
歳月
「Y」の箱(宮崎 治)
『歳月』の秘密(小池昌代
茨木のり子著作目録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
113
非常に仲の良いご夫婦だったのでしょう。 死後発表された、亡き夫への愛が詰まった詩集。2025/08/20
スプーン
35
濃厚なラブレターの如き、亡き夫への詩集。 恋や愛は肉体を超えたものだとわかる。 愛する者を失った老若男女すべての人たちへ。2025/08/14
ryohjin
17
作者の亡くなったあと発見され、出版された詩集。夫を病で失って後、31年間にわたりつづられたてきた詩篇。作者は生前、夫への「一種のラブレターのようなもの」と語っていたようであり、夫亡き後も、作者の中では確かな存在としてあり続いていたことがうかがわれます。五感を通じて残された記憶から立ち上がった言葉の鮮度に心動かされました。「パンツ一枚でうろうろしたって品のあるひとはいるもので」「らくらくとあなたはそれをやってのけた」ここまで書いてもらえる関係って素晴らしいです。2025/06/20
たっきー
12
2007年に刊行された詩集の文庫化。著者の没後に甥が発見した詩を編んだもの。夫・三浦安信氏は1975年に亡くなり、その後31年間1人で過ごした著者。夫のことが大きな存在であったことがわかる。2025/08/19
peco
2
硬質なイメージからは想像し難い甘く艶めいた愛の詩。パートナーに対する絶対的信頼。なんと幸せな出逢いだろう。たった一人であっても絶対に自分を裏切らない人の存在のまるで羊水に浮かぶかのような安心感。無償の愛が実体をもち魂に宿る時のパワー。 同時代に生き、出逢えただけでも奇跡なのに。かけがえのないパートナーとして生活をともにできたからこその埋め難い喪失感。埋め難きものを空洞のままなんとかやり過ごして生きていくために書くことが一縷の救いになっただろうことが想像に難くない。最も身近な愛こそが心を癒す。2025/07/02