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内容説明
世界は支配する側とされる側に分かれつつある。その武器はインターネットとAIだ。シリコンバレーはAIによる大失業の恐怖を煽り、ベーシックインカムを救済策と称するが背後に支配拡大の意図が潜む。人は専制的ディストピアを受け入れるしかないのか? しかし、オードリー・タンやE・グレン・ワイルらが提唱する多元技術PLURALITY(プルラリティ)とそこから導き出されるデジタル民主主義は、市民が協働してコモンを築く未来を選ぶための希望かもしれない。人間の労働には今も確かな価値がある。あなたは無価値ではない。テクノロジーによる支配ではなく、健全な懐疑心を保ち、多元性にひらかれた社会への道を示す一冊。
目次
はじめに――シリコンバレーが広める絶望
第1章 失われた道/DAO――専制か民主主義か
第2章 多元性とは何か
第3章 近代を超える思想
第4章 新しい政治のかたちを求めて
第5章 コモンへの道/DAO
おわりに――2030年の世界に向けて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
120
急激な技術進化に伴って政治とテクノロジーの結びついた未来は不可避と思われる。しかし提示される未来像はプラットフォーマーの支配するテクノ封建主義や中国が推進するデジタル強権支配、AIと社会が融合した統合テクノクラシーに企業の自由至上体制など技術に精通したエリートしか参加できない専制政治型ばかりだ。そこで著者はテクノロジーに必要なデータを提供する一般人に投票用クレジット(QV)を与え、多元的投票を行うデジタル民主主義を提唱する。確かに理想としては一理あるが、誰がQVを管理するのかとわかりにくい仕組みが難点か。2025/09/24
よっち
27
インターネットとAIを使ったテクノロジーによる支配が生まれつつある中で、健全な懐疑心を保ち多元性にひらかれた社会への道を示す1冊。シリコンバレーはAIによる大失業の恐怖を煽り、ベーシックインカムを救済策と称するが背後に支配拡大の意図が潜む中で、インターネットの理想と現実、統合的テクノクラシーや企業リバリアニズム、デジタル民主主義といった新たな概念が生まれて、繋がりをベースにした多元性や財産の共同所有、データの尊厳や新しい政治の形、多元的な投票や市場、マネジメントの新たな可能性を感じさせてくれる1冊でした。2025/07/09
maghrib
6
オードリータンが推奨するPluralityの解説書。民主主義によるIT技術のコントールを否定する統合テクノクラシーや企業(テクノ)リバタニアンと異なり、異なる意見の共存を尊重するデジタル民主主義への道を説く。20世紀初頭のマスメディアが発展したときに民主主義に悲観的だったリップマンとそれを乗り越える道を説いたデューイと対比しているのは興味深い。異なる意見の橋渡しの立場を取るので、左右どちらかからも反対されるのはしょうがないというところはあるが、可能性は感じられる。2025/07/20
k inoue
3
多様な人が参加するようになったことで民主主義は機能不全を起こしつつあるように思います そんな民主主義の仕組みに進化してきたテクノロジーを組み合わせ、多様な人々の意見を吸い上げる仕組みなどを検討されています 複雑な世界を簡易化せずに複雑な状態を表現できるように例えば投票を1人1票とせずにある式に沿って複数の票を投じれるようにする事で多様な考えを表現できるようにするなどが考えられています まだまだプルラリティは新しい概念ですがこの試みが拡がると面白そうだと感じました2025/09/12
そると
2
いい話だと思うが、このシステムに関わっていくことになる一般の人々をプルラリティの提唱側がどう定義しているのか気になった。経済学では経済的合理人というモデルがあるが、合理人の想定から設定を間違えているという突っ込みがある。このプルラリティも、経済的合理人のように人々が利己的で個人的に振る舞った結果、富が平等に再分配されるということなのか?しかし、人って非合理とわかっていても誤りを選択し続ける存在でもあると思うのです。つまりは人という存在を性善説的に語りすぎではないのか?と。2025/10/09




