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内容説明
二つの戦争、そして戦後国際秩序の行方は
ロシアによるウクライナ侵攻とイスラエルによるパレスチナへの非人道的な攻撃。目まぐるしく国際情勢が変化するなか、この二つの戦争に向き合い、プーチンとネタニヤフに逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)。日本人として初めてそのトップに就任した著者は、ほどなくしてプーチンから逆指名手配を受けることにもなった。さらにはトランプ大統領の大統領令による経済制裁の脅威にさらされるなど、世界規模の戦争犯罪に向き合ってきた国際刑事裁判所はいま、存続の危機にある。
第二次世界大戦後にホロコーストに向き合ったニュルンベルク裁判、日本の戦争責任を裁いた東京裁判。二つの軍事法廷裁判にルーツをもち、国際平和秩序を守ろうと奮闘してきた国際刑事裁判所とはいかなる機関か。二つの戦争という異例の事態にどう向き合ったのか。「世界の警察」アメリカが過去のものになりつつある戦後国際秩序の行方とは――。
「世界で起きていることが日本では起きないとは限らない」。「力による支配」がむき出しになりつつある今こそ「法の支配」による安全保障が必要だ。
「ウクライナ戦争の勃発で完全に覚醒した」と語る赤根さんが、その奮闘を通じて未来への責任を語りかける。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たま
77
ICC(国際刑事裁判所)とICJ(国際司法裁判所)の区別もつかないまま読み、勉強になった。ICCは旧ユーゴやルワンダの国際刑事法廷の流れを受け、「ローマ規定」(国際条約)にある四つの「中核犯罪」(ジェノサイド・人道に対する・戦争・侵略の各犯罪)について個人の責任を追及する。日本では東京裁判に対する反感もあり「戦争はとにかくダメ!」の立場もあり、「戦争犯罪」(拷問、人質、化学兵器等々)の規定まで思考が回らないのが実情と思う。著者によれば関連の法制度も整備されていないらしい。日本の政治家、興味なさそう。2025/09/22
もえたく
20
プーチンから指名手配をかけられた国際刑事裁判所(ICC)の日本人裁判官として有名になった赤根智子氏の半自伝的な面と、現在の世界情勢の中で、ICCが武力ではなく「法」の力で守ろうする奮闘ぶりを分かり易く解説。イスラエルのネタニヤフ首相にICCが逮捕状を出したら、米国のトランプ大統領がICCへの制裁を可能にする大統領令に署名したなど知らない事ばかりで読み応えあり。東大女子の赤根氏が愛知県庁の採用試験を受けた際に「友だちいますか?」と聞かれたエピソードは苦笑するしかない。2025/08/16
小鈴
20
日本中が彼女を知ることになったのはプーチンに逮捕状を発付し、そしてロシアから指名手配を受けたニュースだろう。そんな彼女が名古屋出身と聞きどんな人生か興味を持っていたので本が出してくれて嬉しい。3章の彼女の人生の章から読み始めた私をお許しください笑。この本を読むまでICJとICCの違いもわかっていなかった。前者は国家間の紛争、後者は個人を裁く。だから、ロシアではなくプーチンが裁かれたのか。彼女の人生だけでなく、ICCの役割や仕事の流れも理解できた。混沌とした世界でICCが維持できるか。皆で守っていかないと。2025/06/29
makio37
15
著者は国際刑事裁判所(ICC)所長。ICCは国際司法裁判所(ICJ)とは異なり、「国家間の紛争」ではなく"中核犯罪"を犯した「個人」を処罰する。ローマ規程に入った125の締約国がメンバーだが、米中ロやイスラエルは非締約国。中核犯罪とは①ジェノサイド犯罪、②人道に対する犯罪、③戦争犯罪、④侵略犯罪の4つで、プーチンとネタニヤフに逮捕状を出した。アメリカからの制裁という危機への援助とともに、中核犯罪に関連する国内法の整備も喫緊の課題として対応を訴えている。確かに、法律の整備も安全保障に不可欠な要素だと思う。2025/09/21
チェアー
5
巻末のエピローグが特に印象に残る。法科大学院の教え子たちがハーグに家族連れで大量にやってきて、その後日本でICCの活動のために声を上げてくれているという。 戦争犯罪を裁くことは、戦争をしない、させないことにつながる。いや、そのものだ。 2025/07/23