内容説明
これは、もう一つの「日本のいちばん長い日」だ。
あの日、51歳の徳川夢声は、天皇の声に「肉体的感動」を覚えて打ち震えた。
あの日、36歳の太宰治は、玉音放送を聞いて「ばかばかしい」と繰り返した。
あの日、27歳の高峰三枝子は、米兵に襲われはしないかと不安を抱いていた。
あの日、13歳の大島渚は、黙ったまま友人と将棋を指し続けた。
作家、映画監督、俳優、音楽家、歌舞伎役者、マンガ家……総勢130人超の敗戦体験を、膨大な資料にもとづいて再現する意欲作。鋭敏すぎるほどの感性を持ち合わせた者たちは、「あの日」をどう生きたのか。政治家や軍人ではなく文化人たちから描く、もう一つの「日本のいちばん長い日」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
101
中川右介さんと言えば、どこからネタを仕入れてきたかと驚くほどの情報収集力にいつも舌を巻くが、そんな著者が、135人の文化人(文豪、映画人、演劇人、音楽家、歌舞伎役者、漫画家など)が終戦の日を語った証言を集めた一冊。ただ、多くの人たちが、自らの戦前・戦後の生き様と整合するように、終戦日のことを脚色して語っているような印象が拭えない。むしろ、「あれは、人間の感情の一切ない、乾ききった声だった」(大島渚)、「あの人の声、新内に向いているわね」(山本安英)などと天皇の声を評したコメントに、リアリティを感じる。2025/09/10
kokada_jnet
78
文化人や、後に文化人になる人たちが、8/15の玉音放送をどう聞いたかを紹介する、好企画。歌舞伎俳優の章があるのが、この筆者ならでは。探偵作家は乱歩、正史、海野十三だが。乱歩・正史はこれから探偵小説が書けると喜んでいるのに。戦争に協力する作品を書き続けた十三は「家族全員、自決しかない」と思いつめている。星、小松、筒井と、のちのSF作家を入れてくれたのはありがたいが。その後、小松が執筆する処女作「地には平和を」が、15歳の少年が本土決戦に参加するパラレル・ワールドを描く作品であったことを紹介してほしかった。2025/07/09
ぐうぐう
33
玉音放送を聞いた文化人の言葉を集めた中川右介の『昭和20年8月15日』だが、同じスタイルで三島由紀夫自決に対しての文化人の言葉を集めた『昭和45年11月25日』がすでにあり、続編的(時系列で言えば本書が先なのだが)な意味合いを意識してか、まずは敗戦に接した三島の言葉から紹介を始める。あたりまえの話だが、玉音放送を聞いての受け止め方は、推理小説を書ける喜びに「さあ、これからだ!」と叫んだ横溝正史、「ただただ泣けて仕方なかった」と呟く志村喬、「ばかばかしい」と繰り返した太宰治など、(つづく)2025/06/18
おかむら
26
中川さんの昭和日付シリーズ第2弾(前作は三島由紀夫自決の日←コレ面白いよ)。戦前戦後の文化人が終戦の玉音放送をいつどこで聞いたのかをあらゆる文献を渉猟して調べまくる!玉音放送といえばあの「耐え難きを耐え忍び難きを忍び」フレーズを直立不動で滂沱の涙な人々的なイメージを思い浮かべるけど、実際はなんかよく聞こえなかった、何言ってるかわからなかった人多数。あと殆どの日本人が天皇の生声を初めて聞いた訳ですが、思ってたんと違うと感じた人も多数。同じ体験でも千差万別なのがとっても面白かった!まあ人によっては退屈かも…2025/07/23
どら猫さとっち
13
今から80年前の8月15日の正午。終戦の詔書を読み上げた玉音放送が発したとき、どう聞いて感じたか。文豪から俳優、歌手、クリエイターなど、主に文化人を描いた「日本のいちばん長い日」。朝ドラのモデルになった人や、誰もが知っている有名人が、この日について感じたことに、こんなふうに受け止めたのか。絶望と希望が交差し、敗戦の苦しみと新たな時代の息吹を予感させるあの日。すべてはここから始まったのだ。2025/08/21
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