内容説明
「クールジャパン」「観光立国」を始めとする国家的文化政策を筆頭に、書籍・雑誌・ムックからテレビ・ラジオ番組、人材育成セミナーなど、さまざまな媒体を介して社会的に広がっていった「日本スゴイ」コンテンツは、どんな機能をはたしているのか――具体的なエピソードの中から読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨーイチ
20
ザックリ左系の物書き。ツイッターで見かけて紙本は二冊目。90年代辺りからの「右傾化」の傾向を告発?しているのだろう。知らなかったのが「日本というお母さん」てな物言いで、50年代にタイの首相だった人が現地の新聞に寄稿した「東南アジア諸国の独立に当たって日本(戦前の)は母親の役割を果たした」てな文章に由来するらしい。つまり「戦前の日本も良い事をした」って意見の元ネタの一つらしい。著者の調べでは最初に引用したらしい人物の捏造だったらしい。その後の広まり方を見ると結構適当に引用しているのが分かる。続く2025/08/18
さとうしん
15
今時の「日本スゴイ」の諸相あれこれ。日本スゴイ系番組に世界的にもうまく対処できたことになっているらしいコロナ対応の「日本モデル」、戦時中に日本が東南アジア諸国を欧米列強の手から解放したという言説等々、我々はどうして「日本スゴイ」話を素直に受け入れて感動してしまうのかと考えさせられる。中学の道徳教科書にラノベ風の読み物があるというのには(笑ってる場合でもないが)笑ってしまう。2025/06/14
どら猫さとっち
14
デモクラシータイムスや古谷経衡チャンネルで見かけて、読んでみた本。いつからか「日本スゴイ」はエンタメカルチャーから、愛国精神を培う教育にまで至った。そして、偽情報や根拠なき説が加わり、物語(ナラティブ)が生まれ、押し売りされ増殖していく。私たちが今言う「日本人」とは何なのか。国籍か、それとも…?現代日本のイデオロギーの異常な実態を読み解く一冊。本書を読んだら、非国民になりうることは、まずない。むしろ「君たち、冷静になれ」と促す一冊になるはずだ。2025/08/13
Satoshi
12
外国人が日本を訪れ、日本製品、サービス、職人を絶賛する番組を面白おかしく批判するところは軽く読めたが、歴史修正から思想教育の流れはちょっとしたホラーのよう。太平洋戦争のおかげでアジアが解放されたことを日本に感謝するといったアジアのリーダーの発言は出典を確かめる必要かある。2025/08/21
まどの一哉
7
リアルな海外情報は一顧だにせず、ひたすら自分で自分を褒めまくる当時の「日本スゴイ」番組にはウンザリしたものだが、たしかにこれもいよいよ落ちぶれ出した日本社会の精神病理的な現れ。外国人が驚くシャワートイレを日本人の誇りとする、戦前からの全体主義的な伝統がある。2025/06/30