内容説明
時は19世紀。イギリス人外科医師サイラス・コードが乗船する小型帆船デメテル号は、ノルウェー沿岸の極地探検にむかっていた。北緯68度線付近にある目的地のフィヨルドには、古代に建造されたとおぼしき未知の大建築物が存在するのだという。さまざまな苦難を経て、ようやく現地に到達したサイラスたち探検隊一行は、先着したライバル船のたどった運命を知る。そして目的の建築物を発見したとき、予想もしなかった事態が起こる……星雲賞作家が放つ、読者の予測を鮮やかに反転させる、超絶展開の傑作SF! ローカス賞、ドラゴン賞候補作。/解説=渡邊利道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shun
29
19世紀、ノルウェー沿岸を探検中の一行は前人未踏の極地で謎の巨大建築物を発見。これに同行していた外科医サイラス・コードだったが、未知の発見を巡る仲間同士の争いで不運にも命を落としてしまう。だが死の間際、同行者の謎めいた淑女コシルの不可解な囁きを耳にすると間もなくサイラスは別の探検中の場面で意識を取り戻す。そこでも巨大建築物は姿を現し、この理解の及ばない現象を引き起こしているかのような錯覚に陥っていく。未知の超文明による代物か、謎の死に戻り現象を経てサイラス自身の自我を揺るがす事実が明らかとなっていく。2025/07/27
もち
18
「きみから教わった歌も、経験した物語も。なにも持ち帰れない」◆19世紀、巨大建築物を求めて潟湖を行く帆船。だが船体は損傷を負い、医師のサイラスに巨大なマストが倒れ掛かる――。物語は、ここから。想像の埒外で展開する、人間たちのサバイバル。■良質で先鋭的なミステリやSFに特有の、足元が抜け落ちるような感覚。それを何度も、何度も味わえる意欲作。海洋冒険小説から刻々と主題が切り替わり、読み進めるうちにようやく合点がいき、更なる困難が待ち構える。翻弄することに心血を注いだ、エンタメの到達点。2025/07/12
pulp
13
謎の大建築物の捜索中に消息を絶ったエウロパ号を追って極地探検に挑む小型帆船デメテル号。19世紀が舞台の海洋冒険物のような出だしから始まるが、読み終わってみれば、久々にちゃんとした「SF」を読んだな、という読後感。SFとしても小説としても、ラストはとても美しい。ただ予備知識を全く持たずに読むと、展開を理解するのが結構難しい気がする。編集部は、渡邊利道さんの解説は読了後に目を通したほうがいい、としているが、そういう意味ではむしろ先に読んだほうがいいかも(中盤までのネタバレがあるが)。2025/07/23
medihen
13
19世紀初頭、極地に潜む謎の大建造物を目指す探検隊。その探検隊を乗せた帆船の船医を語り手とするヴェルヌ的冒険物語が、現代SFとして見事に着地。思わせぶりな二転三転を堪能させてくれる新生(?)レナルズの技前に脱帽です。 2025/07/17
君塚
10
ただただ良かった。良さしかない。翻訳ものだと思えないほど読みやすく、巧みに構成された世界と自己に関するストーリーはめちゃくちゃ面白かった。何が起こっているのか、メタファーを辿り推測しながら読み進める前半は楽しくて、直接的に胸に響く後半の展開は美しい。記憶に残る、記憶に残したい、そんなSFだった。2025/08/03
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