ちくま新書<br> ラテン語の世界史

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ちくま新書
ラテン語の世界史

  • 著者名:村上寛【著者】
  • 価格 ¥1,045(本体¥950)
  • 筑摩書房(2025/06発売)
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  • ISBN:9784480076878

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内容説明

イタリアの一地方言語に過ぎなかったラテン語は、ローマ帝国の公用語として世界に広まり、西ローマ帝国崩壊後もキリスト教と結びついて普遍的公用語としての地位を築いた。しかし、やがて主要言語としての地位を失い、「教養」語となって現代に至る。長く歴史上に君臨したラテン語はいかにして広まり、生き続けてきたのか。ギリシア語との覇権争い、キリスト教との蜜月、各国の近代俗語との交代──「世界最強の言語」が歩んだ2000年以上に及ぶ数奇な運命に迫る。

目次

はじめに/第1章 現代のラテン語/「ラテン」とは何か?/ラテン文字の広がり/日本の大学ではラテン語が人気/キリスト教とラテン語/現代に「生きている」ラテン語/身の回りにはこんなにラテン語がある/学術用語はなぜラテン語なのか?/文法コラム1 文字・発音/第2章 ラテン語の起源/ローマ建国の伝説/エトルリア語とラテン語/ギリシア語という先駆者/ギリシア語の韻律/ギリシアに魅了されたローマ/弁論家キケロの生涯/ギリシア哲学の導入/散文ラテン語の完成/ウェルギリウス──ラテン文学最高の詩人/ウェルギリウス『アエネイス』/ギリシアとローマを接続する叙事詩/ホラティウス──多彩なる韻文/オウィディウス──諧謔の詩人/ラテン語独自の恋愛詩/オウィディウス『変身物語』/文法コラム2 動詞/第3章 古代末期までのラテン語/劇作家/古代ローマの出版流通/古代ローマの図書館/ラテン語の識字率/古代ローマの教育/役立つラテン語/ラテン語はいかにして伝わったのか?/ギリシア語圏への伝播/古典ラテン語と俗ラテン語/俗ラテン語の台頭/古典教養の衰退/文法コラム3 名詞/第4章 ラテン語とキリスト教/「公用語」としてのラテン語/キリスト教は何を信じているのか?/原始教会とその言語状況/ラテン語圏の初期キリスト教とその言語/ローマ司教とキリスト教/東方ギリシア語圏との溝/新旧訳聖書/聖書のギリシア語訳/ヒエロニュムス/ウルガタ訳聖書/アウグスティヌスの生涯/聖書の文体とラテン語/中世キリスト教のラテン語へ/文法コラム4 前置詞・人称代名詞/第5章 初期中世から盛期中世のラテン語/中世という時代/ラテン語からロマンス語へ/ラテン語発音の変化/ゲルマン諸王国はなぜラテン語を使ったのか?/修道院の生活/修道院における古典伝承/北方の修道院における古典伝承/古典を継承する修道士、ベタ・ウェネラビリス/イベリア半島の古典伝承/カロリング朝の教育復興/正しいラテン語を取り戻せ/正書法と発音/写本はいかに伝わったのか?/写本のために考案された書体/「ゴート族風の」ゴシック体/文法コラム5 形容詞/第6章 学校・教育のラテン語/修道院での教育/キリスト教と古典文学の葛藤/修道院に弁証論は必要?/移動する教師と生徒/弁証論の大流行/教科書や選集での教育/女性はラテン語とは無縁だったのか?/「教養ある女性」へ/修道女、ビンゲンのヒルデガルト/世俗女性の学識、エロイサ/フランス語前夜/ラテン語を駆逐するフランス語/聖書の俗語翻訳/文法コラム6 不定詞・命令法/第7章 イタリア・ルネサンスから現代へ/ラテン語からイタリア語へ/ラテン語の復興/大学で使われるラテン語/ラテン語と教育/ラテン語賛美の陰り/エラスムスの『キケロ主義者』/人文主義の陰り/ラテン語からスペイン語へ/翻訳運動/日本宣教とラテン語/明治以後のラテン語/文法コラム7 修辞学・現在分詞/おわりに/あとがき/読書案内/人名・書名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

111
著者の語り口も分かりやすく、とてもいい本だと思う。ギリシャ語という先駆者→キケロによるギリシャ哲学のラテン語への移植→ラテン語による教養ある社会→中世における話し言葉と書き言葉の分離→カロリング・ルネサンスによるラテン語復興→スコラや人文主義の翳りという世界史の流れが、ラテン語の位置づけの変化という形で見事に説明されている。また、七十人訳聖書とウルガタ訳聖書の関係など、キリスト教とラテン語との関係も納得である。この歴史を踏まえて、現代におけるラテン語教育の意義や実態に、もっと踏み込んでほしかった気がする。2025/07/27

アキ

85
ラテン語は、古代ローマの公用語であった。現代では"It's Latin!"とは「何を言ってるのかわからない」という意味で使用されなくなったが、身の回りにはBVLGARI、ASICS、PRIUSなど会社名や商品名に使用されている。また学術用語もラテン語であることが多い。本書では現代におけるラテン語から遡り、ラテン語の起源、古代ローマでのラテン文学、古典ラテン語と俗ラテン語、キリスト教との関係、中世に修道院でヨーロッパに広まった経緯、イタリア・ルネッサンスでラテン語の復興までの歴史が綴られています。2025/07/27

よっち

23
イタリアの一地方言語に過ぎなかったラテン語が、いかにして西洋文化の基盤となったのか。世界最強言語の謎に満ちた運命に迫る1冊。ローマ帝国の公用語として世界に広まり、帝国崩壊後もキリスト教と結びついて普遍的公用語としての地位を築いたラテン語。その起源から帝国の発展、キリト教徒の関わりと東方ギリシア語圏との間に生まれた溝、帝国が崩壊する過程で主要言語としての地位を失っていったのか、学校・教育におけるラテン語と修道院との関わり、イタリア・ルネサンスでの復興と日本との関わりも紹介されていてなかなか興味深かったです。2025/07/08

さとうしん

16
ラテン語の起源、ギリシア誤との角逐からラテン語による古典の形成と受容、直系の子孫にあたるフランス語、イタリア語などロマンス諸語の形成、日本での受容まで。ラテン語とは直接関わりのない英語もラテン文字で表記されていることは、考えてみれば漢字でもって日本語を表記するのと似た面があるのかもしれない。中世になってラテン語の文法学習が古典の中の名文の学習を通じて行われたこと、後にはそれが本当に文法学習に堕してしまったことは何やら現代の語学教育を連想させる。2025/06/16

電羊齋

15
ラテン語とラテン語世界の歴史。興味深かったのは、中世西欧では、ローマ帝国時代には及ばないにせよ、キリスト教修道院により古典写本の作成、ラテン語教育が行われ、やがてそこから大学が発生するなど、ラテン語と古典教養が断絶しなかったこと。また、行政用語としての使用、ラテン語の子孫といえるフランス語、イタリア語、スペイン語などロマンス諸語の形成過程、そしてラテン語が「俗語」とされてきた各国の言語、近世以降における「国語」へと次第に交代していく過程についても触れていて参考になった。2025/06/28

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