内容説明
今はもういない、大切な人に会いに行く。
〈家族を持たない私に、帰るべき家はない。気ままに転居をくり返してきて、いまも仮住まいをつづけているような気分だ。私に帰る家はないけれど、これから旅する場所はいくらでもある。〉──あとがき
ノンフィクションを書くために、ゆかりのある人や土地をたずねて旅を続けるなかで呼び起こされる過去の記憶や懐かしい人びと──。沖縄にルーツをもつ自身の家族の物語から、近現代史にまつわる論考、台湾・韓国の芸術家をめぐる紀行や、取材・執筆の日常を綴った掌編など、読むほどに旅愁がつのる珠玉のエッセイ集。文庫化にあたって、新たに「証言する木」「帰ってきた王の肖像画」など4編を収録している。
〈私が知る恵姐はいつも人に囲まれていた。特に、彼女を慕う女性は多い。その仲睦まじさは、家庭の相談事や愚痴を長老に聞いてもらいたくて、アジアのどこかの井戸端に女性たちが集まる光景を彷彿させた。[中略]
沖縄という独自のアイデンティティと誇りを持つがゆえに、東京にいても漠然と抱き続ける違和感。けれども、どこにいても逃れられない、彼女の異邦人としてのまなざしは、旅に出ると一転して強力な矛と盾となる。そのゆらぎは、行った先々で、その場所からちょっとはみ出してしまった人を磁石のように引き寄せる。ちょうど、私が引き寄せられたように。〉──解説・星野博美
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いとう・しんご
10
首里城つながり。この著者の首里城の本を読むつもりなんだけど、さきにこっちを読んじゃいました。東京生まれながら首里にルーツがある著者が南方や朝鮮、日米各地を取材して回ったお話。武雄市の図書館指定管理者委託についての記事が別の意味で面白かったです・・・図書館を民間委託するというのは、子供達の将来よりも現在の自分の財布を優先する発想だと著者は言いたいようであり、僕も完全に同感です。2025/08/10
二人娘の父
7
沖縄にルーツを持つも、沖縄で育ったのではない、という複雑な想いが溢れ出るエッセイ。非常に興味深く読んだ。大叔父は古波蔵保好。若くしてふた親を亡くすというところからくるタイトル。いろいろ調べるとジャーナリストとしても、たいへんな活躍をした方のようだ。みずからのルーツと格闘しながら書かれる(私にはそう思えた)文章には、故郷・沖縄への愛とともに、切ない気持ちも見え隠れする。2025/06/14




