中公叢書<br> 日英開戦への道 イギリスのシンガポール戦略と日本の南進策の真実

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中公叢書
日英開戦への道 イギリスのシンガポール戦略と日本の南進策の真実

  • 著者名:山本文史【著】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 中央公論新社(2025/05発売)
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  • ISBN:9784120049019

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内容説明

「大東亜戦争(太平洋戦争)」については主に「日米開戦」に至る過程に焦点があてられ、真珠湾攻撃より早く始まった日本とイギリスの開戦への経緯は等閑視されている。
本書は、まず、イギリスがシンガポール海軍基地建設し、ワシントン軍縮条約、日英同盟が破棄された1920年代以降の、日英の南洋における利権の対立を分析する。
英連邦(イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア)では、日本によるシンガポール陥落や東洋艦隊の壊滅は、イギリス帝国史上最大級の恥辱的出来事とされ、「失敗の原因」を探るという観点から「イギリス『シンガポール戦略』の失敗」に関して大きな関心が、戦後直後から現在にいたるまで、持たれている。
本書は、イギリスの南洋政略と当時の日英のシーパワーのバランス、日本の南進策の実態、陸海軍の対英米観の相異の変質を明らかにしながら、日英開戦に至った経緯をグランド・ストラテジー(大戦略)の観点から検証する

目次


序章 「シンガポール戦略」
「ジェリコ・リポート」
「シンガポール戦略」の起源
シンガポール基地建設案の採用とその後
センバーワン海軍基地
縮小される基地計画
政権交代とシンガポール海軍基地
建設開始と引き伸ばされる建設期間
対自治領政策から対日戦略へ
帝国両端での脅威
シンガポール海軍基地の開港
「シンガポール要塞」の実情
約束の履行
開戦
「プリンス・オブ・ウェールズ」撃沈
シンガポール陥落

第一章 太平洋のバランス・オブ・パワー
ワシントン会議に向けた海軍の準備
ワシントン会議に向けた陸軍の準備
ワシントン会議に向けた日英の基本方針
ワシントン海軍軍縮条約第一九条
陸軍の反対
新たなるバランス・オブ・パワーの成立
帝国国防方針
帝国国防方針改定
ジュネーヴ会議
ロンドン軍縮会議に向けて
ロンドン会議への基本姿勢
おわりに――「シンガポール戦略」と日本海軍

第二章 海軍軍縮体制の終焉
ロンドン会議と統帥権干犯問題
満洲事変と第一次上海事変
海軍軍縮の終焉と第一九条
おわりに

第三章 世論の受け止め――一九二〇年代
基地との最初の遭遇
関東大震災とその後
労働党による一時休止
シンガポール海軍基地をめぐる日英の外交協力
シンガポール海軍基地と一九二〇年代の論客たち
おわりに――一九二〇年代の言論空間におけるシンガポール海軍基地

第四章 世論の受け止め――一九三〇年代
「一九三五~六年の危機」
未来戦記とシンガポール海軍基地
反英論の盛り上がりとシンガポール海軍基地
頂点を迎える反英論
池崎忠孝『新嘉坡根拠地』
おわりに――一九三〇年代の言論空間におけるシンガポール海軍基地

第五章 一九三六年の南進策の再検討
南進策の浮上
「帝国国防方針」の改定
南進策の主唱者たち
おわりに――一九三六年の南進論

第六章 マレー・シンガポール攻略「作戦計画」の起源と進化
作戦計画なき「作戦計画」
マレー・シンガポール攻略作戦の起源
井本熊男の南洋視察旅行
「マレー・シンガポール攻略作戦」作戦計画の進化
おわりに――「作戦計画」の持つ意味とは?

第七章 欧州戦争の衝撃と南進
欧州戦争と日本
おわりに――一九四〇年の南進論

第八章 大戦略なき開戦
戦争への躊躇――一九四一年春
独ソ戦開戦前夜の状況
独ソ戦の衝撃
戦争への道
おわりに――対英戦争から対米戦争への拡大

第九章 シンガポール攻略に向けた準備の完成
シンガポール攻略に向けた準備
おわりに

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

キミ兄

4
ワシントン条約におけるハワイとシンガポールの海軍基地の位置付けとか、開戦前の陸海軍に対するガバナンスのなさとか、なるほどにあふれた本。でも著者も海軍で一番悪いのは開戦をあおった山本五十六だと思ってるんじゃないだろうか。南進するだけならあれほどひどいことにはならなかったのかもしれない。☆☆☆☆。2018/10/29

八八

3
現在では大国というとアメリカを指すが、戦前の日本において大国と言えばイギリスとアメリカであった。このことは戦前の外交文書においてしばしば英米という一括りで扱われていたことからも理解できるだろう。本章は日米戦争として見られがちなアジア・太平洋戦争をイギリスという視点から把握しようというものである。その視点の中心にシンガポールを置き日英関係を描いていく。太平洋における日本と英国の協力と妥協から、中国問題に絡む危機と南進などをワシントン会議から開戦までを外交や軍事から述べていく。2020/10/13

ceskepivo

2
「日本にとっての悲劇とは、あの時代、国家のグランド・デザインを描く人物もいなければ、それを行うための組織も機関も、存在しなかったのである」。これで戦争を遂行したのか。2022/09/05

ワッキー提督

2
イギリス側の対日戦略など、類書が少ない分野については勉強になったが、後半の議論に関しては、参照している先行研究を漁った方が良いように思われていた。 特に最後に著者が「もしも参謀本部の権限がもっと強ければ、戦争目的を限定した戦争を行ったはずであり、あれほどひどいことにはならなかったはずだ」という結論は、世界大戦の本質を理解していないとしか思えないあまりにズレた主張であろう。 このような「ズレ」が最後に可視化されてしまったため、本書、特に後半部分は精査しながら読む必要がある一冊であると感じた。2021/09/01

Naoya Sugitani

1
良書。日英開戦の政治過程を明らかにしている。特に注目すべきはほとんどこれまで明らかにされてこなかったシンガポール要塞の真実。従来シンガポールは英軍の要衝として知られ、日本の初戦の勝利の象徴としてしばしば取り上げられてきた。しかし、その実態は要塞と呼ぶにはあまりに心もとない武装都市程度のものだったことが明らかにされている。イギリスとしても日本とアジアで戦端を開けばひとたまりもないことは分かっていた。なぜ日英同盟の蜜月を経て両国が戦争をすることになったのか。そのことを考えさせてくれる。2017/11/10

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