出版社内容情報
「あなたは、この世界に生まれてきたいですか? この世界に生まれてきてくれますか?」子どもを産むためには、その子からの同意が必要となる世界を舞台にした衝撃作。『彼岸花が咲く島』で芥川賞を受賞した著者による、芥川賞受賞第1作。
内容説明
人間が完璧でない以上、どんな制度にも必ず欠陥は存在する。出生前に胎児の意思を確認する「合意出生制度」が法制化された近未来の日本。胎児には遺伝や環境などの要因を基にした「生存難易度」が伝えられ、生まれるかどうかの判断がゆだねられる。出生を拒んだ胎児を出産した場合は「出生強制」の罪に問われる世界で、同性婚をしたパートナーとの間に人工妊娠手術により子を宿した主人公・立花彩華。彼女が、葛藤しながらくだす決断とは―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
182
芥川龍之介の『河童』に描かれた、胎児が自らの出生を決められるシステムが人の世で実現したら。極限までの人権優先社会といえるが、子供に「生まれたくない」と否定された親には悪夢だ。妊娠中絶を巡り国論を二分するアメリカなら、反対テロどころか冗談抜きで内戦にもなりかねない。いくらでも大きな社会小説となる設定だが、物語は子から拒絶された同性愛カップルの苦悩に絞られる。膨大なディストピア世界の構築より、そこで生きねばならない小さな個人に作者の眼差しは注ぐ。人の作る制度や法律は人を幸せにするのか、根源的に問いかけてくる。2022/06/11
とん大西
129
「私達の子として生まれてきてくれますか」。出生前の胎児に誕生の意思確認を行う合意出生制度。もはや世界で普遍的な制度として社会にとけこんだそんなに遠くない未来。読んでいて恐ろしい。倫理というものがひどく頼りないものと気づいて。こんな世にならないとは言い切れない時流の激しさを思い描いて。妊娠した彩華。お腹に新たな命を宿したその喜び。愛する人と生まれてきた子どもとともに日々を重ねていく幸福。が、問わねばならない法の非情。何が正しくて何が真実で…そんな議論も超越して命は芽吹く。生まれて…きてくれますか2022/01/09
machi☺︎︎゛
92
初めての作家さんだけどどこか村田さやかさんを思い出すような内容だった。今からだいぶ先の近未来の設定で、その頃には安楽死も同性婚も当たり前のように認められている世界。妊娠したら出産前にコンファームというものを産科で受けそれに胎児が生まれたいという意思を示さなければ出産できない。勝手に産むと罪になる。言いたいことは分かるけど人間だから感情がある。そんなはい,そうですか。と割り切れるわけがない。その問題に同性婚をした彩華と佳織はぶち当たる。二人の出した答えが合っているのかは分からないけど私はこんなの絶対無理。2024/02/06
なゆ
90
何が正解か、わからなくなってしまう。胎児の同意なく産むと犯罪のようになってしまう『合意出産制度』。生まれるのを楽しみに大切にお腹の中で育んでたのに、拒否なんてされたら…。胎児に示される判断材料の生きづらさの数値化とか、そもそもの判断能力とかどうなの?と思いながらも、何でも自己責任が行き過ぎるとこうなりそう。親ガチャなんて言葉から、こういう世界が生まれるのかな。同性婚のふたりが妊娠したのにこの制度の壁にぶつかって、意見が割れて思い悩むのだけど…ラストの展開にえええ〜?!で、余計にグルグル考え続けるはめに。2022/04/08
ネギっ子gen
70
【生の自己決定権という圧倒的に正しい大義名分の下で――】出生前に胎児の意思を確認する「合意出生制度」が法制化された近未来の日本。彩華は、同性婚をしたパートナーとの子を宿したのだが……。2021年刊。『悲劇の誕生』や『河童』や『夏物語』などを想起しながら読む。<本当に大事なのは自分の意思で決めることそれ自体じゃなくて、それが自分の意思だと信じ込むことなのかもしれません。重要なのは真実じゃなくて、そう、信念なんです。ある結果が自分の選択によるものだと信じるだけで、人間はその結果を受け入れやすくなる>と―― ⇒2026/01/22




