内容説明
庭のその木は、人の生殖に力を与えるという。人類の業を抉る三島賞受賞作。幼い頃に2階から落ちたが庭の橘の木のおかげで助かったことがある恵実。以来、木の力を恵実が媒介するという噂が流れ、子どもを望む人々が大勢家を訪れるようになった。自分にすがる彼らの気持ちに戸惑いながらも役割を果たす恵実だったが、そのことが自身や家族に暗い影を落とし――子孫繁栄という常識を揺さぶる問題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
117
なんだろ、このもや~っと、ざらっとする感情は。不快?不穏?木に操られてると言うにはこの木が気の毒な感じがするが、もっと早くどこかで・・例えばこの家を決めた父が出ていった時にでも伐ってしまえばとも思ってしまう。橘の木と恵実の共依存と言ってしまうには恵実のこれまでが哀れかー身籠りたい(身籠らなければならない)女性にとっては藁にも縋る思いだ。だが、それだけでは無い女性もいる最後が絶句。途絶えると思えた橘の木の子孫繫栄物語と読んだ。2025/07/30
信兵衛
14
読み応えあり、興味尽きないと同時に、恐ろしくもあり、深淵さもあり、と言うに尽きます。2025/07/29
TI
7
木を拝みその家の子におなかを触ってもらうと子供が授かる木と家の話。とはいえ淡々と進む。本の中での時間もかなり長く経過。不思議な読後感。2025/07/22
Hanna
6
三島由紀夫章受賞作ということで読んでみた。橘の木に助けられ、そして女性たちを子孫繁栄のために救おうとする。当然、力になれない方もいて。宗教のもともとは、こんな風だったのかな?なんて。2025/07/10
名無しのオプ
4
第38回三島由紀夫賞受賞作。単行本はまだ刊行されておらず、読んだのは初出の「新潮3月号」にて。 遠い親戚の所有していた、橘の木の植わった土地。そこを譲り受け、家を建てて住んだ四人一家。彼らを襲う、橘をめぐる不思議な出来事。 というふうに、個人的には公式のあらすじよりもこういうふうに読んでしまって、ちょっとしたホラーでした。ほんとに。超自然的な現象が起きて、結果どうなったって結構な話なので。シームレスに視点人物が変わるとこもありそれもあってより怖く読んだかも。2025/06/20
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