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内容説明
それは愛なのか暴力か。家族神話に切り込む。
2008年、筆者は日本初となる加害者家族の支援団体を立ち上げた。
24時間電話相談を受け付け、転居の相談や裁判への同行など、彼らに寄り添う活動を続けてきた筆者がこれまでに受けた相談は3000件以上に及ぶ。
対話を重ね、心を開いた加害者家族のなかには、ぽつりぽつりと「家族間性交」の経験を明かす人がいた。それも1人2人ではない。筆者はその事実にショックを受けた。
「私は父が好きだったんです。好きな人と愛し合うことがそんなにいけないことなのでしょうか」(第一章「父という権力」より)
「阿部先生、どうか驚かないで聞いて下さい……。母が出産しました。僕の子供です……」(第二章「母という暴力」より)
「この子は愛し合ってできた子なんで、誰に何を言われようと、この子のことだけは守り通したいと思っています」(第三章「長男という呪い」より)
これほどの経験をしながら、なぜ当事者たちは頑なに沈黙を貫いてきたのか。筆者は、告発を封じてきたのは「性のタブー」や「加害者家族への差別」など、日本社会にはびこるさまざまな偏見ではないかと考えた。
声なき声をすくい上げ、「家族」の罪と罰についてつまびらかにする。
(底本 2025年6月発売作品)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
92
ルポ。まあ言わない。親子やきょうだい間で性交があっても言ってくれない。たまに兄からの性被害や、それに気づいた母から相談を受けることがある。10代の頃から家庭内で性暴力の被害にあっていた人は慢性的に鬱状態となり、社会的にも孤立しやすい。家庭内の性暴力は力の誇示と支配のために行われることが多く、被害者はプライドを損なわれ自己不全感に悩むことになる。滅入る内容だがこういうことも有りうると頭に入れておくことは大事。この著者苦しい仕事良くやってる。2025/10/27
こばまり
52
倫理的に咎められても行為自体は違法でないうえ、希薄な罪悪感の下、家庭という密室でいわばなし崩し的に発生する場合もあり支援の手が届きにくい。顕在化していないだけで、異様なレアケースとは言い切れないのではないか。2025/11/19
山口透析鉄
31
犯罪加害者の家族にまつわる活動のことは聞いていて、この本はBookLiveで購入しました。父娘・父子(同性の事例が冒頭に紹介されています)や母子・兄弟姉妹間の性加害の事例、著者が相談を受けた家族から紹介されていて、家族間での殺人事件等に絡んでいるものもあります。 因習に支配されている家族(地元では名家ということになっている)の事例とかも如何にもです。男尊女卑、第一子が未だに絶対、ではお話にならないのですが、自分が威張っていられる範囲ではそれを家族にも押し付けて権力者として振る舞えるようです。(以下コメ欄)2025/06/06
Nobu A
30
阿部恭子著書初読。今年6月初版で既に第3刷。正に「世は小説より奇なり」を地で行く内容。流石「攻め」の小学館。正直に言うと怖い物見たさで手に取った次第。兄の妹強姦等、眉唾物、もしくは若干の脚色ではないかと訝しく思うが、いずれにしろ衝撃的な話が盛り沢山。有名な「野田市小四虐待死事件」をメディアが報道しなかった裏話や他国の事情や取り組み等、興味深い比較情報もあり、あっと言う間に読了。家庭内犯罪や加害者家族支援は課題が山積しているが、筆者がそもそも犯罪加害者家族支援を始めたきっかけは何だったのか気になった。2025/12/13
小鈴
26
日本においても最もタブーとされ「ないこと」にされている「近親性交」について、父親、母親、兄弟姉妹について、加害者家庭の支援の過程で知りえた事例を当事者の許可を得たうえで匿名性を担保しながら紹介している。父親から娘の事例はわりとよく聞くが、父→息子、母親から息子への事例は最タブーとされているがよくぞここまで話を聞けたものだ。この本の凄いところはこれだけではない。第4章近親性交で生まれた子供たちの「出自を知る権利」にまで触れていることだ。家族婚は法律で禁止されているが生まれてきている子供たちが確かにいるのだ。2025/07/01




