内容説明
蛍が舞う夏祭りの夜──山間にある小さな町に暮らす中学生の坂邑幸恵と桐生隆之は、生きるために互いの秘密を守り合うことを決めた。それから十五年後、大人になった幸恵と隆之の予期せぬ再会が、家族や友人、町の人々の人生に大きな影響を与えていく。明かせぬ秘密を抱え、思い描いた道のりではなかった。それでも、この小さな光が照らす世界を大切に生きたい。一人一人のささやかな祈りを描いた、心震える傑作小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
218
親ガチャという言葉は使いたくないが、毒親や機能不全家族の子が救われない境遇なのも事実だ。そんな家庭の子は否応なく他者の心を読むのに長け、必死に生きようとする。親に恵まれない遺伝に呪われたような連鎖のただ中にある子が、身勝手で情けない大人たちから逃れようと苦闘する姿を描く連作短編集は、思い切り苦味の強い酒を5杯続けて飲まされた気分になる。かろうじて救いの予感を残すためどん底には落ちていないが、人の弱さ愚かさを容赦なく抉る物語は読むのが辛い。それでも連鎖を断ち切って自立する少年に、人として希望を託したくなる。2025/08/14
いつでも母さん
165
拝啓、町田さま。これでもかと重苦しい人間ドラマを紡いで心身ともにすり減ってはいないでしょうか。連作5話、それぞれのラストにほのかな願いを勝手に刷り込んでしまう私をお許しください。蛍の光でも、明け方の星でもいい、心は正道の傍でこれからの日々を穏やかに見守る所存です。親として、人として私自身に出来ることは・・多くの正道が真っ直ぐ逞しく生きて行けますようにと願うばかりです。私もどこかで「ズルい親」の一人だったかもしれません。沢山の苦しみと共に本作を拝読いたしました。これからもずっと追いかけさせていただきますね。2025/08/04
hiace9000
147
運命と罪に翻弄されながらも、儚く仄かに灯る光を掴みとろうと求め、生きるために必死に抗う人々を祈りと抉りで描き出す連作長編。毒親の元での苛烈な生育ぶりを手加減なく描写する町田筆は、読み手の安穏や安逸を引き裂き、まるで獰猛な獣のように心に深く爪を立てる。絶望感に苛まれ、「もう死んだ方がまし」とすら思える最悪の境遇での人との出会いと稀なる縁が、失われたはずの自己の存在価値を甦らせていく。蛍の光のような希望と、しあわせを希求し歩く「人の業」の深さ。明と暗の両面をこんな〈仕立て〉で見せる手腕は、町田さんならでは。2025/08/09
ナミのママ
122
「逃亡の夜」「少年の目」「神様にお願い」「しあわせのかたち」「蛍が舞うころに、また」5話連作短編集。人の噂があっというまに広がる人口の少ない田舎町で、中学生の幸恵と隆之は祭りの日に秘密を共有する。それから15年。再開した2人の周囲を描いたストーリー。これでもかと不幸を重ねた登場人物にうんざりしつつ読み進めた。そこから最後に繋げていけば確かに人のあたたかみは感じる。作者らしい作品といえばいいのかな。(いただいた本)(サイン本)2025/07/22
うっちー
112
正道の生きざまが何よりの救いでした2025/08/05
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