内容説明
アカデミック・ライティングの意義や評価に関する議論を含みつつも、「ライティング教育=アカデミックな文章の技術指導」という狭い見方に限定されず、人間形成全体におけるライティング教育の可能性を探る。そのため、パーソナル・ライティングというもう一つの軸を立て、アカデミックとパーソナルの両側面を架橋することを目指す。
目次
まえがき
第I部 ライティング教育の俯瞰図
第1章 ライティング教育序説──アカデミックとパーソナルという枠組み
はじめに
1.アカデミック・ライティングの起源を探る
2.書くことにおける個人なものの台頭──自己という近代的源泉
おわりに
第II部 アカデミック・ライティング
第2章 米国におけるアカデミック・ライティング教育──現代伝統修辞学における形式的完成の追求
はじめに
1.アカデミック・ライティングにおける「論理」の複数性
2.米国型エッセイの構造
3.現代伝統主義というパラダイム
おわりに
第3章 フランスにおけるディセルタシオンと言語資本──書くこと、話すこと
はじめに
1.ディセルタシオンとは何か
2.ディセルタシオンと口頭コミュニケーション
おわりに
コラム1 中国における読むことと書くことをつなぐ教育方法──読書筆記
第4章 ライティングの評価はどうあるべきか──ルーブリック論争を調停する
はじめに
1.ライティングの評価論が応えるべき問い
2.ルーブリック
3.ルーブリック批判とその論点──ルーブリック論争の到達点
4.これからのライティング評価論──ポスト・ルーブリックの地平
おわりに
コラム2 アカデミック・ライティングとパーソナル・ライティングの評価──創成原理と規範原理
第5章 ルーブリックを飼いならす──論証の評価、論証としての評価
はじめに
1.ルーブリックというツール
2.現状のルーブリックの問題点
3.ルーブリックを解きほぐす
4.論証の評価、論証としての評価
おわりに──どうルーブリックを飼いならすか
座談会1 「書ける」を問う──書くことを教える現場から
第III部 パーソナル・ライティング
第6章 米国におけるパーソナル・ライティング教育──「自己表現」という厄介者と付き合う
はじめに
1.米国における「表現」の歴史
2.表現主義の実践例
おわりに
第7章 フランスの大学における「日誌(Journal de bord)」の実践──社会・文化的格差を意識した初年次教育
はじめに
1.フランスの大学教育
2. 「大学生になる」こと──パリ第8大学における「書くこと」を通した初年次教育実践の系譜
3.スティグマを取り除く──「自己の社会学的分析」実践
4.二つの実践の特徴と日本への示唆
コラム3 経験や記憶をライフストーリーによって再構築する──カナダ・ケベック大学の人生を創造する授業から
第8章 日本の大学におけるパーソナル・ライティング教育の現代的な意義
はじめに
1.日本と米国の大学における文章表現教育の変遷
2.学生発達論のパラダイムシフト
3.認識の起点としての〈私〉
4.学びの起点としての〈私〉
5.パーソナル・ライティングの理念と実践
6.文章記述の生成プロセス
7.作品と批評
8.パーソナル・ライティングの教育的効果
おわりに
コラム4 作家が書くことを教えるということ
第9章 生活綴方における書くことの教育──書くこと・読むこと・話すことを通じた人間形成
はじめに
1.認識・表現・生き方の姿勢──意欲と個のリアリティへの注目
2.調べる綴方と意欲
ほか