内容説明
朗読をかさねやがては天国の話し言葉に到るのだろう
ぼくの街、森、湖辺(うみべ)から
きみの駅、埠頭、観覧車へと
連絡橋を渡っていく切手たち。そして鳩。
──────飛浩隆
【収録歌より】
はるのゆめはきみのさめないゆめだからかなうまでぼくもとなりでねむる
いちめんに銀杏つぶれラブコメの最後はかならずラブが勝つこと
関係を名づければもうぼくたちの手からこぼれてゆく鳳仙花
にしんそばと思った幟はうどん・そば 失われたにしんそばを求めて
香港の十分おきに雨が降る映画のなかの雨の香港
【栞】
川野芽生「過誤に殉じて」
榊原紘「あこがれ」
平岡直子「風穴」
【著者】
佐々木朔
1992年生まれ。神奈川県横浜市出身。早稲田短歌会を経て、現在「羽根と根」同人。
目次
湖辺で
春睡綺譚
良い旅を
あのひとに
ラブ・コメディ
そのあとの
夏の日記
ベリー・サマー
走る
セオリー
パーリデイ
pro(f|c)essor
到達
rain radar
往信
探偵と天使
草津、湯畑のそば
具象と灯籠
まちあるき
たばかり
橋と水/ペテルブルク
早春賦
百年前
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みつ
13
初めて出会った歌人(1992年生まれ)。掲載誌ごとに分けられた23の章からなる。一頁に収録された歌の数も二首を中心にしつつ一首、三首の章があるのは、掲載誌を踏襲したものか。全体に軽い表情が目立つ中、謎めいた状況のもの、上の句下の句の脈絡を欠いたもの、断片的なもの、散文的なもの、つぶやきをそのまま無造作に歌にしたように読めるもの・・など様々な手法が織り込まれ、一筋縄ではいかない。そこに若々しい感情をそのまま歌うものが挟まれるので、その輝きが一層際立つ。短歌の多彩な世界をおおいに堪能できた一冊。2025/07/29
バーニング
2
『羽根と根』が創刊して以来ずっと読んでいたので、佐々木朔の歌集が出るというのは単純に嬉しかった。場所について書かれた歌が好きだ。 さっきまで寝ていた犬がもういない北公園の秋の夕暮れ(p.48) 三ノ輪橋から早稲田まで乗るときの都電のように折りふしをゆく(p.60) 2025/06/30
Noy
2
★★★★☆ 帯にある一首がやはり一番好き。 連作は、地の歌的な歌が弱いものが多い気がした。 全体的には好きな歌集だった。2025/04/30
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