内容説明
まどろみながら彼は,はてみ丸のことを考えていた.あの小さな舟で旅した日々を――.作家の没後に公表された〈ゲド戦記〉最後のエピソード「火明かり」.ほか,未邦訳短編「オドレンの娘」,『夜の言葉』よりエッセイ3編,講演「「ゲド戦記」を“生きなおす”」などを収めた,日本語版オリジナル編集による別冊.解説=中島京子
目次
序 文――“The Books of Earthsea”に寄せて……………井上 里 訳
オドレンの娘……………井上 里 訳
火明かり……………井上 里 訳
アメリカ人はなぜ竜がこわいか……………室住信子 訳
夢は自らを語る……………山田和子 訳
子どもと影と……………青木由紀子 訳
「ゲド戦記」を“生きなおす”……………清水真砂子 訳
解説 ル=グウィンの幸福な「発見」を読む
幸福な読者として……………中島京子
書誌・日本語版刊行情報
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Die-Go
33
『EarthSea』世界の最後を締めくくる短編と作者のエッセイ、講演。表題作は、ゲドの最期に向かっている姿を描写しているが、悲しさよりも幸福感を感じさせる。海こそがこの世界の全てを包括するものなのだと改めて思わされた。★★★★★2025/06/21
A.Sakurai
7
『ゲド戦記』シリーズの最後に書かれた2つの短編がメイン.表題作はハイタカが逝去間近いベッドの上でテナーに介護されながら過去を振り返るという,まさに終幕.作者の没年に発表されたというのも感慨深い.短編のほかに収録されているエッセイは主に第4作『帰還』での転換を語っているが,もう一つの収録短編「オドレンの娘」はまさにその転換後の視点を如実に示している.初期三部作でも伝統ファンタジーの大道具小道具を使いながらも内面世界を書いていたとはいえ,『帰還』の衝撃は今も鮮やか.ゲド戦記はこの転換があってこその作品だろう.2025/06/07
flocon
6
後半の評論部分、小説よりするする読んでしまった。評論のほうが「平易」なのは、それだけル=グィンが思想を物語として凝縮するのがうまいということなのかも。それにしても6冊読んできたあとの表題作の静かな時間はなんとも言えず。2018年発表で、作者が亡くなったのがその年の1月。評論部分の多弁さから、この経緯も聞けるような気がしてしまう。まだ経験していないテーマを扱った巻がまとまっていないとあったけれど、実際の死はどうだったのかと考えるとしんみり。でもその巻が一番エンタメ度が高いのもル=グィンらしくておもしろい。2025/06/27
はあびい
5
アースシー第7巻。短編が2編とエッセイ、講演が収録されています。これでアースシーは読み終わりました。ネビュラ賞受賞作の「西のはての年代記」シリーズがまだ残っています。2025/06/20
Bks
4
未翻訳の短編2編が楽しみだったが他の講演録も非常に良かった。地図を描くことで手がかりを得る創作方法、ジェンダーやマイノリティ問題とファンタジー作品について。表題の短編「火明かり」は読む時期、年齢によって印象が変わりそう。個人的には死や老いを迎えようとも衰えない想像力というものの力強さを感じて前向きな気持ちになった。 2025/06/20